夢みたいな夢とうつつに / 夢うつつ

街の奥で誰かの絵画と葉っぱが一人歩きしている　後悔なんてすべて舟のうえに浮かべてしまって　反時計回りの水流にゆるやかに吸い込まれていく星といっしょに　いやというほど涙を流したいな

　死ぬのはいやだ
　死ぬのはこわい

体が養分を吸収するその真逆のように　肌がわたしからピリピリと心地よい音を立てて剥がれてゆく　嫌いなものだけを食べて　残りで世界を作ろうとすると　最後は私が宇宙に拐われてしまいそうだった

　死ぬのはいやだ
　死ぬのはこわい

南極から飛び立ってオーロラになる子ども　ほどほどにしなさい　さもなくばあなたは人でなくなる　そう言う母が読み聞かせる童話は星を回転させるほどきれいな未来のお話　お姫さまが孕んだ星を爆裂させて世界になるのがあこがれ

　死ぬのはきれい
　死ぬのはあこがれ

わたしという名前のいくつかの星が　子どもという名前のいくつかの銀河が　母という名前のいくつかの宇宙が　夢を見ていた　綺麗だね　お姫さまという名前のいくつかの夢幻が　いま無限にかわる　わたしの真後ろで過去が無限にふくらみ　それを見ることなく進んで行くのだけれど

　消えないで

　　　　　　　　☆
　　　　　　　☆　☆
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絵画みたいな世界のなかで一枚の葉っぱが落ちた　踏みつけたことに気づかないままかしゃりという音だけを聞いて涙が出てきた　水平線にひとりきりの舟が浮かんでいて　それを遠くに遠くにはこんでゆく波だ　宇宙と私たちが知らぬまに摩擦を大きくして　それを押し返すくらいにいつか誰かが流した涙がごうごうと地球という星を突き動かしていた　その舟がついにみえなくなり

　消えないで

　　　

大きな大きな朝日がそこから無限のエネルギーを持ってわたしにあいさつする　舟のかけらが太陽に溶けこんで確かに爆発していた　無限を駆け抜けた透明な光がわたしの肌にやさしく触れて　

　生きている
　わたしは生きているよ

　　　

　叫んだ　音を通り越して世界が絶え間なく広がり　宇宙の中心に何があるのかを知った　今まで流した涙とこれから流される涙すべてが再結晶を起こして世界を輝かせて　乱反射しながらひとつのわたしという像を結んだ　大きく息を吸い込むと光が溢れ出しそうで　そのまま光るようにわたしは約束をした

　星になりましょう