音は壁を抜ける / 黒崎言葉

垂れ下がる雨滴はすべて苦く
一瞬の爆発的拡大を見せ
落下していく
(引きちぎれた皮を名残惜しく
見つめながら)

塗料の上から爪を立てる
ぱき、と
ひび割れから弾力
落ちて
居場所だって減っているのだ
隙間に詰まる実感が
凍った皿の裏に
頭を抱いている

指のなぞる鱗粉は耐え難くて
じっと唇の傷をなめた