花園 / 鯨野九
死は暴かれてはいけない
道は示されてはいけない
魂に裏庭があって
濡れた土のしおはゆさを
血や涙だと決めつけてはいけない
魂に裏庭があって
綻んでゆく蕾の切なさを
どんな色彩にたとえてもいけない
(死を言葉にできないように)
(道を永遠に戻れないように)
(それなのに)
こぼれそうになる
蛹が孵るむずがゆさで
春は軽骨なぬくもりに満ちて
魂に裏庭があって
すべてゆるしてほしくて
それで扉をこぼしては傷んでいた
死は暴かれてはいけない
生を誰も知らないように
魂に裏庭があって
君さえ入れない花園から
綻んでゆく生と死を摘みあつめて
明るい窓辺に飾る
すべてゆるさなくていい
こんなにもたくさんの窓があって
そのすべてを奇麗だと言わなくたって
いつか君がぼくに
たった一輪を、欲しいと望むのなら
たぶんもうそれだけでいい