初夏の寝室 / いいな
寝室はしとしとしと、と、
初夏の雨の音でいっぱいだ
隣室からはしゃんしゃんしゃん、と、
家族が聴いてる音楽が
雑音みたいに漏れる
ベッドに腰を掛け 煙草に火をつける
ちょっとお腹が痛いな
死への憧れと恐怖が
からだに満ちていくのを感じて
思わず眼を閉じる
ちいさな豆電球ひとつの寝室は
まるでぼくのこころみたいだ
雨音も雑音も少しひんやりした空気も
それに夜そのものも、ぼくみたいだ
煙草を消して、水を飲み、横たわる
寝室に置いてるものは少ない
デスクもハンガーラックも本棚も
使ってないから埃をかぶって
置いてあるもののほとんどが
死んだがらくたたちだ
それなのに 豆電球にぼんやり照らされると
まるでまだ生きてるみたいに ぼくを見てる
別に何か喋ったりするわけじゃないけど
多分 みんなはただ、
豆電球が切れるのを見守っている
主人に使ってもらってるモノだから
豆電球のことを妬んでる
その光が消えるのを
ただじーっと見て待っている
たしかに 豆電球消さないと
ちょっとだけまぶしくて
ぐっすり眠れないかもしれないね
真っ暗になるまでもう少し
みんなも連れて、一緒に寝よう
寝室はしとしとしと、と、
初夏の雨の音でいっぱいだ
隣室からはしゃんしゃんしゃん、と、
家族が聴いてる音楽が
雑音みたいに漏れる
ぼくはすーはーすー、と、
ひと呼吸をしてから手首を刺す