非意味の輪郭 / 深井一
「意味」の意味とか
「解釈」の解釈とか
そういった種類の言葉遊びが
言語の裡で許されているためには
意味という語の意味や
解釈という語の解釈が
意味や解釈という名辞に先立って
言語の外のどこかあちらの方角から
あらかじめ定められている必要があるという
(概念という概念が存在することについて)
それはつまり
わたしたちが普段いうところの
意味や解釈という語の意味は
まったくもってそれらの意味ではないということになり
瞬間
あらゆる記述は言語的真空へと吸い出される
(だが真空はポテンシャルをもつ)
もはや謎はどこにも存在せず
解釈の解釈可能性は
解釈不能なアトムたちの
剥き出しの相互作用に帰せられるだろう
言葉は物質であり
物質は言葉であり
それは至極当然のなりゆきで
起こっていることが起こっているのにすぎない
それでもなお
世界が秘密を擁してみえるなら
それはわたしたち自身が
秘密を生み出しているから
極端に偏ったわたしたちにとって
認識すべきは同様の偏りであり
普遍的乱雑さは視界の隅へと追いやられ
それら必然として見出される確率的偶然を
わたしたちは自然と呼んでいるのだ
(引っ張れば解ける複雑な結び目)
無際限に広がる言語的真空と
靴紐を引っ張って飛ぶあなたとわたし
じつはそこが無重力の空間であることに
わたしたちは決して気付かないだろう
気付いているようみえたとしても
諦めたふりをしてみたところで