言うべきでないこと / 黒崎言葉

風の鳴らす金網がきりきりと痛むと
子どもが急ぎ足で
死んでいくような気がするのだ
暇と積み上げた辞書は何も語らなくて
僕はだから大げさに手を振った
顔にまとわりついた霧は
いつまでも消えなかった

文字の光沢を
いったい誰が意識して良いのか?
その疑問は年号と塔が逆さに見えた
車の後部座席でのことで
僕がまだ
揺れる目路に吐き出される煙の
ひろがりを辿っていたころだった

いよいよ脳は色を失っていく
徐々に透過を強めていく
有りがちな加速なのだ これは
外転した指先が
溝に触れる感触だけがある
気色悪いと
素直に思った