飴色の日記 / 早乙女まぶた

カーテンの向こうで冬が激しく呼吸している
部屋の中だけが皮肉のように静かで
何もかもから忘れられたように
ぼくは無言の重圧に押し潰されていた

積まれたガラクタがぼくを見ている
季節が変わっても思いはなにも伝わらなくて
見境もなくどんなものも集めたけれど
手に入れたのは一生分の嘘だよ

過ぎていった記憶には名前がなくて
目にはもう見えないから日記に手を伸ばした

「紅葉ってたき火みたい」
「火が消えたら冬がくるね」
薄い文字が告発する
手遅れの回想をもう一度再生する
間違いはきみに目的を達成して
ぼくは突然ひとりになりました

引き出しのガラクタがぼくを見ている
思いはやっぱり伝わらないままだけど
そこから素晴らしい世界は見えますか
本当のことは知りたくなくても
すぐそばにいてぼくを責めるよ

日記はきみで飴色です
悪い夢の発酵が哀しみの幼子になった

引き出しの冷たい手を握って
生と死の区別を確かめました

どうして消えたの
冬は来たよ