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風化とか木の育ち方とかものが時間変化でかたち作られる入門の入門! 『流れとかたち』 感想

私たちが見る自然は自然現象の中でそうなりやすいかたち

私たちは自然をみて『自然の奇跡』とか『神様の見せてくれた光景』みたいに思うことはないでしょうか?確かに美しい光景をみるとそれがさも奇跡的な確率の低い自然現象の影響のし合いで生まれたように感じるかもしれません。ただ本書では自然の光景がそうなりやすいようになっただけで、何も阻害要因がなければそうなっていた光景だということだ。なんとも味気ない話だ。ただ本書ではそうなりやすいというのはキーワードのようだ。雪の結晶や木の形、雷のかたちはそれぞれそうなりやすいからそうなるようだ。言葉で形が決まるなんかよりは全然科学的で納得いく説明だ。

ちなみに『水は答えを知っている』については別の記事で書いているが、対照実験になってない実験について勉強になるので、どこがおかしいかトリックを考えながら読むと勉強になる。

話を戻すと、本書は著者の言うところであるコンストラクタル法則について、はじめに概要が語られ、次に個別の分野で法則がどう支配的な影響を及ぼしているかが解説されていきます。私としてはあまり新しい視点だとか重要な発見は見当たらないが、それは「熱工学のノーベル賞」と呼ばれるマックス・ヤコブ賞とルイコフメダルをもらっている作者が自身を誇示するような文体で書かれているからかもしれない。ただ熱力学の教科書からはあまり学べない雷の形や木の形に類似があり、雪の結晶や溶岩の形について説明をしていることには、面白さを感じる。ただ著者自身はそれに関して重要だと考えてないようで、私の関心ごととかなりズレていて大変驚いた。

化学平衡や熱力学の非平衡、『生物と無生物のあいだ』あたりを読んでおくとわかりやすい

高校で理系を選択した方にはお馴染みの化学平衡と思ったけど、通ったけど高校で化学を選択した方以外には馴染みないか…ともかく化学平衡です。化学平衡とはある試薬の中に他のある試薬を入れると最初に化学反応を起こすが一定の時間がたつと反応が進まなくなり、止まったように見えることがある。何を当たり前のことを…と言われそうだが、この場合はいくつかパターンがあり、その中でも平衡と呼ばれる現象はかなり面白いです。説明を書くとめんどいので、以下にwikiなどwebページを載っけておきます。
正直wikiは難しいので高校生向けの学習用のサイトを見る方がいいと思います。

化学平衡とは、見かけ上何の反応も起こっていない状態このとき、正反応と逆反応が同じ速度で起こっています。 つまり、全体として見てみると、 見かけ上何の反応も起こっていない ように見えます。 この状態を、 化学平衡の状態 といいます。

https://www.try-it.jp/chapters-9481/sections-9506/lessons-9507/point-2/#:~:text=化学平衡とは、見かけ,の状態%20といいます%E3%80%82

ようは上のトライのサイトの説明通りの現象です。

福岡伸一のサントリー学芸賞をとった『生物と無生物のあいだ』を読むとより化学平衡やその延長線上にある概念がわかる。なぜか物理学詳しくない人でも知れ渡っている物理学のなかでは不思議な用語『シュレディンガーの猫』で有名なシュレディンガーが後年生物学の研究に傾倒していたエピソードから始まるのですが、そこに化学平衡の拡張したアイデアが詰められていて、最初から読み応えがあります。
熱力学にも関係があるので、軽い入門書や高校生用の学習参考書などもよんでおくといいかもです。

コンストラクタル法則

化学平衡についてわかるとその拡張の生物の生命活動を『生物と無生物のあいだ』で理解でき、またその後本書を読むとなんだコンストラクタル法則ってもっと大きな話に適用できるということかと理解できるはずです。
著者が自信満々にコンストラクタル法則の発見を誇示していますが、正直誰かがいつか言い出したことだよなと思う発見でびっくりできると思います。

ただ本書のよくないところがあって、作者の主張にもありますが細かいところがない、もしくは詳細を書いたものに誘導がない。つまり興味を持った人間がそこから次に進むべき本がないところだ。
またメカニズムについて軽視しているきらいがあり、科学的な主張に見えずらい。著者が批判するプリゴジンとさほど変わらない。現象の説明をつけれても、メカニズムがわからなければ技術に昇華されることが叶わないのだ。

もうちょっと詳細な理論が出ないといずれ科学者以外興味を失いそうな内容だった。

追加

本書で特に文句を言いたいところは訳の問題か本書自体の問題かわからないけど、『進化』という言葉など使い方が微妙なところが散見されるところと著者のところどころで科学史に対する無知というか過去の科学者の行動を愚かと断じるような筆致が好ましく思えない。
単純に現代でも観測が難しい現象をを産業革命時代に出来なかったことをなぜ思いつかなかったのかと言ってみたりとにかくなんか不愉快だったり無知を思わせる表現が多いのが欠点だ。


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