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読んでないけど解説してみる 森嶋 通夫 著『なぜ日本は行き詰ったか』

結局こういう本は

ある程度知識さえあれば目次を見ればどういう主張をしたいか大体わかるというものです。まあちょっと昔で決まりきったキーワードを使った文書に限りますが…
受験関係のYouTubeの動画が流行っているのにあやかって受験国語っぽいことを言うと国語の重要なキーワードの大体は東大の二次試験の国語の第一問の二十年分くらいさらったら覚えられます。私は『自然』、『生態系』、『環境』について論じた文章を読んで初めて環境問題の何が大切なのか分かった気がします。『環境』とは人が住んで暮らす場所も概念に含むので、守らないかんと。
今回感想を書く本には『上から』、『下から』というキーワードになりますが、『上から』というと物理的な意味より権威や権力関係が上という意味で時代劇とかでいうところの『お上』でしょうか。『下から』は逆で大衆とか民衆という意味ですかね。
大体こんな感じであたりが付けられますね。
下記に目次を貼っておきます。

図表一覧
謝辞
まえがき
第1章 序論
第2章 イデオロギーと経済活動――国際比較
第3章 日本における封建体制から資本主義体制への転換
第4章 日本の金融システム――その強みと弱点
第5章 私的官僚制としての日本企業
第6章 上からの資本主義のもとでの二極分解
第7章 下からの資本主義をめざしての苦悩
第8章 21世紀の日本の前途
参考文献

2024 06/24 https://www.iwanami.co.jp/book/b262206.html

「日本」がテーマで
第6章 上からの資本主義のもとでの二極分解
第7章 下からの資本主義をめざしての苦悩
なんて国家と大衆みたいな観点の見出しを使うときは大抵決まった人物の思想が関係します。

そう、中江兆民です。中江兆民と言ったら『三酔人経綸問答』や『一年有半』を著したことで有名ですが、為政者から人民に施しとして与えられた、限定つきの人権、恩賜的民権という概念を言い始めたのが今回は重要です。日本では市民革命によって人権を獲得したしたわけではないので、そのことから今だにちゃんとした民主主義が日本には確立できていないと言われることがあります。そして中江兆民は欧州のように市民革命などで市民自ら勝ち取った権利を恢復的人権と呼びました。

そして『なぜ日本は行き詰ったか』も中江兆民と同じように「下からの資本主義」という言葉で「恢復的人権」のような大衆から始める資本主義を日本で起きることを願ったのでしょう。日本は国家主導か国家と縁のある実業家の旗振りで業界が動いたり、主要な経済が偏ったりして、個々の企業が国とは関係なくイノベーションを起こして業界を盛り上がれてないのかもしれません。

要点

中江兆民の恩賜的民権と恢復的人権という概念は、のちの時代でも度々表現を変えられて使われます。本書で森嶋通夫が上からの資本主義、下からの資本主義と言われるものは近代化してない日本で行政の旗振りで動く経済と民間の起業家が動かす経済のことなんでしょう。ただどうやったら下からの資本主義が起こせるかはちょっと読まないとわからないようですね。

経済学で結構大きめな成果を残した方の本なのでぜひ

本当はリカードやマルクスの理論を数理モデルで分析した傑物なので森嶋道夫の著作をおすすめすとき、そういうのを紹介したいのですが、いかんせん上に紹介したもの以外は全集くらいしか日本語の本がないので今回は慚愧に絶えないですが、上の二冊のみをしゃお迂回しておきます。

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