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アルバム落穂拾い(2024年夏)+α

6月はなんだかいろいろ大変だった。体調をくずして39度の高熱が出たり(もう治りました)、職場でコロナが蔓延して上司と後輩が休んでしまったり、なんじゃあと思うような事態が多発した。思い返すと去年の6月もコロナウィルスに感染して自宅でうんうん言いながら寝込んでいたし、この時期はどうも体調をくずしやすいのかもしれない。
体調をくずして一番嫌なのは体力だけでなく気力や思考力も落ちてしまう点で、何にもする気が起こらなくなることだ。高熱の中ボーッとする頭で考えていたのは、ただただ時間が早く過ぎ去って元の状態に戻ってくれということ。でもひとつわかったのはそういう状況でも出来ることはあるもので、私の場合『ドラえもん』の単行本を読み返すことは楽しくできた。やはり『ドラえもん』は素晴らしい漫画だ。治癒効果まであるなんていままで知らなかったぞ。
さて、というわけで音楽です。何の脈絡もないですが今回は音楽の話です。

4月から6月のあいだに聞いたアルバムの中から気に入ったものを選んでみたので感想と一緒にnoteにポイッ。


カマシ・ワシントン『Fearless Movement』

サックス奏者カマシ・ワシントンによるジャズアルバム。『The Epic』が宇宙と実存をテーマとし、ジャズによって彼方へ導こうとするアルバムだったのに対して、この『Fearless Movement』は内なる感情に身を任せ、もはや感情を振り捨てるかのように踊り、踊り、踊り続けていく。そんな宗教が生まれる以前に存在していた原始的な祝祭としての音楽、いや咆哮らしき音を響き渡らせている。カマシ・ワシントンが「ダンス・アルバム」と呼ぶように、小手先のスキルよりも音の連なりによるリビドーを優先させた感情がほとばしっており、めちゃくちゃ効く。なんつうか元気になる。明るい気分になるとかそういう意味では無く、音のプリミティブさに”あてられる”。
ジャズってこんなにプリミティブな音を作れるのか。いや、プリミティブな音こそがそもそも「ジャズ」なのかもな。なんて思った。


Dos Monos『Dos Atomos』

シンプルにかっこいい。繰り出されるリリックの鋭さが意味を理解する前に脳内まで直接響いてくる。ビシバシビシバシズドンズドン。音的にはハードロックぽさもあれば民謡っぽさもあって”音の濁流”という印象。それがすごく気持ちいい。
硬質ではある。しかしむしろそれこそがスタンダードな音だろと言わんばかりの佇まいでラップを重ねていくから聴いてるうちにどんどん「これでいいんだ。これがいいんだ」って気分になってくる。ここにあるのはチルとはまた違う気持ちよさで、常に若干の緊張感が伴っているんだよな。それはきっと荘子it、没、TaiTanの三人が必ずしもお互いのすべてに同調して音を作っているわけではないのが要因なのだと思う。なんというか全体的にセッションっぽさがあって、お互いがお互いの音を尊重し、高め合った結果生み出された音という印象。ダークでシリアスでいたずら心もあり、現状に対して「穿ち」を与えんとするパワフルなアルバムだった。つうかライブ行きたい。機会を見つけてきっと行くぞ。


ビリー・アイリッシュ『HIT ME HARD AND SOFT』

これまでの作品に比べると主張という主張は朧気で、男性中心主義への批判や、フェチズムへの拘泥といった政治性、センセーショナルさは影を潜めている。が、おそらくこれはわざとやっているはずで、鮮烈なデビューを飾り、一種のアイコンとまでなったビリー・アイリッシュにとってその「伝え方」はもはや訴求力を失っており、違うやり方で現実と非現実にアプローチをしようと、わかりやすさを避け、ゆらめくように歌い続けることで鑑賞者自身が静かに耳を傾けるように仕向けるような、そんなアルバムだと感じた。
彼女のアルバムの中ではたぶん一番好き。ゆるやかで優しいこの雰囲気は、いま私が求めている気分にとても合う。


#00年代洋楽ベストソング100

先日、Xの一部音楽界隈で、2000年代の洋楽ベスト100を決めようぜ。という企画が行われまして、楽しそうだったので自分も参加しました。参加するのは簡単で、ハッシュタグを付けて自分なりのベスト30をポストするだけ。投票の結果が出るのはお盆休みが終わった頃らしく、まだ先なのですが、せっかく作ったのでnoteに私が作ったランキングとプレイリストを置いておきます。
ちなみに見方は上から順に好きな曲。私はJディラの作る音が大好きなので、このランキングは仕方ないのです。こうならざるを得ないのです。
Jディラの『ドーナツ』は私にとって何というか魂と合致するアルバムで、こんな感覚になるのは他にレイ・ハラカミの作る音楽くらいしか思い浮かばない。かたやヒップホップのビートメイカーが作る音。かたやエロクトロニカ&テクノのミュージシャンが作る音。違うジャンルなのは分かってるんだけど、自分の中でこのふたりの作る音楽は「同じ棚」に並べて置かれている。そういうイメージ。
でも近いと感じるのはあながち間違いじゃないのかも。Jディラもレイ・ハラカミも緩急の変化のさせ方とか、「ゆらぎ」や「浮遊感」に対する感覚が似てるなあって気がするから。
ついでに言うとXでポストしたリストからは微妙に変更を加えてます。つまり完全版。にしても2000年代の洋楽はいいですなあ。うん、これはいいものだ。

1.J Dilla『So Far To Go (Feat Common & D'Angelo)』(2006)
2.MGMT『Kids』(2007)
3.Arcade Fire『Wake Up』(2004)
4.YEAH YEAH YEAHS『Maps』(2003)
5.Red Hot Chili Peppers『Can't Stop』(2002)
6.JOHNNY CASH『Hurt』(2002)
7.Sufjan Stevens『Chicago』(2005)
8.Daft Punk『One More Time』(2001)
9.Radiohead『Idioteque』(2000)
10.Antony & The Johnsons『Hope There's Someone』(2005)
11.LCD Soundsystem『All My Friends』 (2007)
12.The White Stripes『Seven Nation Army』(2003)
13.Strokes『Someday』(2001)
14.M.I.A.『Paper Planes』(2007)
15.Franz Ferdinand『This Fffire』(2004)
16.Kanye West『Stronger』(2007)
17.Norah Jones『Don't Know Why』(2002)
18.Vampire Weekend『A-Punk』(2008)
19.D'angelo『Untitled (How Does It Feel)』(2000)
20.Animal Collective『My Girls』(2009)
21.Fleet Foxes『White Winter Hymnal』(2008)
22.Wilco『Jesus, Etc.』(2002)
23.JAY-Z & LINKIN PARK『Numb/Encore』(2004)
24.Eminem『lose yourself』(2002)
25.Coldplay『Viva La Vida』(2008)
26.Sonic Youth『Incinerate』(2006)
27.Outkast『Hey Ya!』(2003)
28.Sigur Rós『Hoppipolla』(2005)
29.Quantic and his Combo Barbaro『Undelivered Letter』(2009)
30.Rufus Wainwright『Hallelujah』(2001)

というわけで雑な音楽語りでした。皆さんくれぐれも体調には気をつけてお過ごしください。元気が一番。体調くずしたときは好きな音楽聴くか、好きな漫画読むくらいしか出来なくなるんだから(人によるだろそれは)。


追記

上記の2000年代洋楽ベストソングですが、結果が発表されたそうです。私が投票した曲がたくさん入っていて、でもどこにもランクインしていなかったりもして、良いランキングだなあと感じます。
2000年代って90年代以前に比べるとインパクトが薄いと言われがちですが(要出典)、私は色んなジャンルでおもしろい曲が量産されていた時代、という印象があってやっぱり好きです。


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