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スフィアン・スティーヴンス『JAVELIN』他

ばばーん。今回は音楽のお話です。そこまでコンスタントにあれこれ聴いてるわけじゃなく、気が向いたときにチェックしてる程度ですが、ここ最近自分好みの新譜が立て続けに出たので紹介がてら感想を書き残しておきます。

スフィアン・スティーヴンス『JAVELIN』

良いです。すごく。
全体としては『イリノイ』を思い出すような明るく和気あいあいとした音に満ちていて、聞いててすご~く癒やされる。でも歌詞は結構内省的でそこはいつものスフィアン。同時に「愛」や「死生観」や「感情」について詩を、彼の優しく儚げな声に乗せて歌っています。それは悲しみや痛みについての歌ではあるけれど、その先にある自分と他者への愛についての歌。曲単位で好きなのを聴くのも良いけれど、やっぱりこれはアルバムというトータルな形で聴いた方がいい作品で、流れの中に彼の人生が、そして「音楽」それ自体の歓びが浮かび上がってくる。孤独や死に向き合うことで”生”へと目を向けるという点においては『キャリー&ローウェル』的な側面もあるし、電子音を活かした音作りからは『ジ・エイジ・オブ・アッズ』を彷彿とさせる。そんな彼自身のキャリアと境遇を重ねた作風はここにおいてひとつの美しい帰結を見せてくれた。このパレードのように楽観的で、祈りのように厳粛な情景は、彼の繊細さと優しさ、そして美しさそのものなのだろう。傑作です。


yeule『Softscars』

アーティスト名は「ユール」と読むらしく『ファイナルファンタジー』に由来する名前らしい(ユウナからかな?)。一聴、懐かしい気持ちが込み上げてくる。わざわざマイブラやスロウダイヴの名前を出す必要もないくらい、彼ら前進のバンドが作ってきた音楽からの影響が色濃く聴き取れ、ドリーミーかつポップな、”痛み”を感じるアルバムになっている。しかも『花とアリス』をカバーしていたりと、Parannoulとの共時性も感じたり。その他ファッション的には荒木経惟、沢尻エリカ、戸川純からの影響もあるんだってさ。でもこんな風に専門用語や界隈の人しかわからないアーティスト名を多用して紹介する必要なんかぜんぜんなく、ユールにはユールにしかないサウンドがあり、それが私に響いた。ここで言いたいのはただそのことなのだ。若者(とは限らないけど)が持つ「苦悩」や「不安」という感情の発露として、自身の内にある痛みと正面から向き合い、「私はこんな人間です」とぎこちなく、大胆に、誠実に自己紹介をするようなエモーショナルな作品。岩井俊二の映画だけでなく、アニメ・ゲーム等日本のサブカルチャーからの影響も見て取れ、ビジュアル的にはゴスのイメージやゲームキャラクターっぽさもある。ここには彼女にとっての”いま”を象徴する音が詰め込まれていて、そんなところを愛おしく思う。


響現『Awakening』

ネットを徘徊してたらたまたま見つけたアルバムで、聴いてみたらすごく好きなやつでした。ジャンル分類するならテクノやエレクトロニカになるんでしょうが、ポップでかわいい歌声と、ピコピコという電子音がプラスされて豊かなサウンドスケープを生み出している。なんだろ、相対性理論を初めて聴いたときの感動に近いのだけど、それよりもっと清々しく、楽しげな雰囲気に満ちているので気分があがります。キラキラとした電子による景色を耳から、体から、心から味わえる、そんなアルバム。


以上、三作品紹介でした。上記2つはリンクを貼ったSpotifyで聴けますし、響現『Awakening』もリンク先のサイトで聴けるようになってます。スフィアン・スティーヴンス『JAVELIN』は彼のキャリアの中でも傑作中の傑作、というか現時点での到達点だと思います。個人的にはこれまでの作品の中で一番好き。まあ音楽は自分好みのものじゃないと中々食指が動かないものですし、聴いても何が良いんだかわからん、ってことになりがちなものですが、こいつらはマジで良いんで聴いてみてほしいなあ。良ければおひとつどうですか。

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