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夢の神殿〜アスクレピオスと聖徳太子

月の新年がはじまって天王星も順行して、
さて今日は何をお話しようかと思いましたが、
ひきつづき夢見が活発なままなので、
夢見に関する神アスクレピオスについてにします。
………と書いたまま下書きにいれて早9か月、
なんとこれは2023年2月の音声配信をテキストにしようと思って
そのまま忘れていたものです。

ですが、先に書いていた月の新年うんうん以外には、
内容的賞味?読?期限はありませんので、
今年の下書きは今年のうちに…あらためて公開です。
良かったらおつきあいください。

この記事は加筆していますが
元になった音声の配信はこちらです


まずはアスクレピオスから

今回は夢解きそのものではなく、古くからの夢との付き合い方、
夢の神殿についてのお話です。
が、その前に、この神殿に祀られているのはアスクレピオスについて記しておきます。アスクレピオスは、ギリシャ神話の医学の神さまです。

アスクレピオスの杖という物が有名ですが、これは蛇つかい座の蛇をアスクレピオスが抱いているからであり、実は、へびつかい座こそ、神の一員に加えられたアスクレピオスの姿なのです。

アスクレピオスの杖はこれです

へびつかい座、へび座の姿はこんな感じ👇

ちなみに、同じく蛇が巻き付いた杖というと思い出されやすく、間違われやすいのがケーリュケイオン、またはカドゥケウス、ヘルメスの杖ですが、
これとは別ものです。アスクレピオスの杖の蛇は1匹、ヘルメスの杖は蛇は2匹と羽根、と言う違いもあります。

⭐︎ヘルメスの杖についてはこちら👇

後に神の仲間にいれてもらったアスクレピオスですが、父はアポロンです。母はテッサリアのラピテース族の王プレギュアースの娘コローニスといいます。そんな二人に事件が発生します。

「コローニスが浮気をしている」とアポロンと兄妹のアルテミスに告げたモノがいました。それはアポロンの連絡係を担っていたカラスでした。怒ったアルテミスはコローニスを矢で射殺します。けれどこれはカラスの嘘、また別の説では勘違いとも言われていますが、いずれにしても、彼女は息を引き取ります。ただ、この時、彼女は身重でした。それを最後に伝えられたアポロンは子どもを救います。

この子がアスクレピオスです。アポロンは生まれた子どもを賢者ケイロン(ケイローン)に預けます。ケイロンとは、射手座の守護神、賢者です。そしてそこで成長していきます。

⭐︎ケーロンについてはこちら👇をご参照ください。

さて、アスクレピオスは、この育ての親にならい、成長と共に養父以上の医療の知識や技術を身に着けます。しかしある時、医学的才能を用いて、死者を生き返らせてしまいました。

これに怒ったのが冥界の王ハーデスでした。そして「これは世界の秩序(生老病死)を乱すことだ」と、全能の神ゼウスに訴えます。ゼウスも、「そりゃいかんぞ」ということで、ゼウスの雷で、アスクレピオスを撃ち殺してしまいました。

⭐︎ハーデスについてはこちらをどうぞ👇

ただ、それまでの彼の功績は素晴らしいものだったので、それを認められ、死後、天にあげられてへびつかい座になり、神の一員に加えられたのです。

ここから、病気を治療する神様としてあがめられるよううになったそうです。日本でなら、薬師如来さんに人々が祈るようなものかもしれません。

アスクレピオスの神殿の夢と神々

そしてこのアスクレピオスの神殿ができたそうです。
今日のメインのお話、ようやくたどり着きました。

どんな場所かと言いますと、
この神殿にこもってアスクレピオスの夢を見ることができたら病気が治ると信仰されていた神殿だそうです。

来た者は体を清め、供物を捧げ、神聖な寝台上で眠りにつきます。
そこには眠りの神ヒュプノス、夢の神オネイロス、健康の神ヒュギエイア
3柱が祀られていてました。

ちなみに、ヒュギエイアアスクレピオスの娘という説がありますが、
ともあれこの3柱がアスクレピオスの脇についていたといいますから
ますますわたしは、薬師如来の脇侍、両脇にいらっしゃる日光菩薩月光菩薩みたいだと想起してしまいました。

そしてその3柱に見守られながらそこで眠り、
夢にアスクレピオスをみたら病が治る
または「こうしたらなおる」というお告げが得られたということです。

これは現代の夢解きでも言えることですが、夢を見る事によって精神のバランスが整い、身体も復調することがあります。また、睡眠中は体内で起きている小さいな異変も大きく感じられて状態が解るので、それが原因究明に役立った可能性もあると、わたしは考えています。

ちなみに、私自身の経験の一例ですが、とっても歯が痛くて目が覚めたら、全く痛くもないし、異変もないという時がありました。けれど、四角い箱の底を裏返している夢を見ていたので、歯医者さんに行き、その場所をみてもらいました。すると「ほんのわずかだけど虫歯になりかけていますね」とのこと、とても早めに治療をしていただいたことがあります。

他にも、経験している方も多いと思いますが、寝ている時は、ほんの少しの動きも夢の中では大きなものになりやすいものです。例えばベッドから足がはみ出してちょっとだけ下がる、というようなだけでも、大きく落下する夢になるようなこともあります。このように、すべてがデフォルメされて伝わるので身体の状態もはっきり感じることができます。

ですから、この神殿でのご神託も、もしかしたらそんなことと同じで
「ここを治せばいい」と、解った人もいたのではないか思うのです。
潜在意識が把握している情報をしかっり教えてくれているケースを、
ご神託と呼んだのかもしれないとも思うのです。

ただもうひとつ別の効用にも思いを広げます。前出の眠りの神ヒュプノスは、夢の神オネイロス死の神タナトスと兄弟であり、死もまた眠りであったとされていました。

ですから、もしかしたら病になり、死を恐れている人も、死と眠りが同じであるような気持ちになって安らげる神殿ではなかったか…これは全くの私の想像ですが、そんなことも思います。

聖徳太子の夢殿と物語

アスクレピオスの神殿はギリシャですが、古代エジプトにも同じように
夢を見るためにこもる神殿があったりしたようです。夢は人が皆、経験出来る事であり、かつ不思議なものという捉え方もされているので、世界中に、夢にまつわる神や祈りの場所があります。

日本は、といえば、湯島の妻恋神社も初夢などでは有名ですが、はやりここは聖徳太子の夢殿を上げたいと思います。

夢殿は、法隆寺の東院の本堂でもある八角円堂です。とはいえ聖徳太子が実際に使われていたわけではなくて、現存のものは聖徳太子の斑鳩の宮の跡に建てられたものです。

正式には法隆寺東院夢殿

かつて聖徳太子が法隆寺に参籠して瞑想にふけったときに黄金でできた人が現れる夢を見たという故事に基づいていると、法隆寺の解説にありました。ですから、夢殿は太子を供養する場であると同時に、太子が見た夢の器でもあるというのです。

超人的な力があったと言われたりする聖徳太子ですから、籠って瞑想することで何かと通じたり、それを夢からのお告げをいただいていたなど、本当の所はよくわかりませんが、そんな存在を形にしたもののようにも思われます。また、昔の人は特に、夢を神と自分をつないでくれる、媒介となるものだと信じていたのだろうと思います。

そして多分、それは今も同じ、神がどうかはわかりませんが、夢は覚醒時の自分の知らない所から様々なことを教えてくれる、不思議でありがたいものであることは変わらないと思います。

また、ヘッダーは夢殿の頂上の露盤宝珠
「宝瓶に八角形に宝蓋や華麗な光明をともなったもの」なのだそうです。
なかなかスパークしている!と好きな宝珠です。

ちなみに、実際には夢殿がどう使われたのかはお寺には残っていませんが、
楠山正雄さん(大正〜昭和初期に活躍の翻訳家でもある児童文学作家)が書かれた「日本の英雄伝説」〜講談社学術文庫、講談社の中によせられた物語があるのでご紹介したいと思います。

その名もズバリ「夢殿」。青空文庫に掲載されていますので、全部をご覧いただけるのでご興味のある方は是非そちらでご覧ください。ここでは一部抜粋いたします。

冒頭から、お母様の穴太部の真人の皇女が「ある晩御覧になったお夢に、体じゅうからきらきら金色の光を放って、なんともいえない貴い様子をした坊さんが現れて」と夢から始まります。

先にあげた法隆寺の紹介では「瞑想にふけったときに黄金でできた人が現れる夢を見た」と聖徳太子ご本人がみたということですが、この物語ではお母様がみたということなのでしょう。そして生まれた聖徳太子、厩戸皇子の頃からのエピソードが続きます。遣隋使の頃になり、夢殿についてのシーンが出てきます。

 太子のお住まいになっていたお宮は大和の斑鳩といって、今の法隆寺のある所にありましたが、そこの母屋のわきに、太子は夢殿という小さいお堂をおこしらえになりました。そして一月に三度ずつ、お湯に入って体を浄めて、そこへお籠りになり、仏の道の修行をなさいました。 
 ある時太子はこの夢殿にお籠りになって、七日七夜もまるで外へお出にならないことがありました。いつもは一晩ぐらいお籠りになっても、明日の朝はきっとお出ましになって、みんなにいろいろと尊いお話をなさるのに、今日はどうしたものだろうと思って、お妃はじめおそばの人たちが心配しますと、高麗の国から来た恵慈という坊さんが、これは三昧の定に入るといって、一心に仏を祈っておいでになるのだろうから、おじゃまをしないほうがいいといって止めました。
 するとちょうど八日めの朝、太子は夢殿からお出ましになって、「先だって小野妹子の取って来てくれた法華経は、衡山の坊さんがぼけていたと見えて、わたしの持っていたのでないのをまちがえてよこしたから、魂をシナまでやって取って来たよ。」 とおっしゃいました。 

楠山正雄著 夢殿~青空文庫より

夢とはおもしろいものです。解ければまたびっくりしたり、なぜそれを?というような日常の中では不思議だと言われるような、様々なことを教えてもくれます。是非、今夜も素敵な夢が見られますように。


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