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わたしゃあなたのそばよりも 信州信濃の蕎麦がいい

信州軽井沢ふつうの生活
2020年夏、東京恵比寿から軽井沢に移住してきた、僕とパートナー、アイコ先生と2匹の猫。僕たちの軽井沢ライフは決してスタイリッシュなものではありませんが、四季折々の美しい花鳥風月と、それを愛する人々との交流、そして、郷里筑豊や東京でのエピソードを織り交ぜながら書き綴ってまいります。お茶でものみながら、ゆっくりとお楽しみください。

軽井沢に似合う食事ってなんだろう?

フレンチ? イタリアン? カフェ? いずれにしても洋風な印象が強い。実際、人口わずか2万人のこの町には、フランス料理店が60軒、イタリア料理店は40軒、そしてカフェに至っては230軒以上もあるのだそうだ。人口あたりの洋食店比率でいくと、おそらく日本屈指なんじゃないだろうか。ひょっとしたら世界屈指かもしれない。

ちなみに、食いしん坊の僕たちがこの町にやってきてから、かれこれ3年経つけれど、腰掛けるときにそっと椅子を押してくれるようなお店には、一度も入ったことがない。今後もそういうグルメレポートは書かないし、書けないから、そこのところはあんまり期待しないでほしい。

やっぱり蕎麦かな

ここは信州、蕎麦どころである。幹線道路からちょっと入れば、あちこちに蕎麦畑が広がっているし、もちろん、おいしそうなお蕎麦屋さんもそこここにある。

しかし、実は、僕はそんなに蕎麦が好きではない。いや、決して嫌いではないのだけれど、だって、お蕎麦って食べてもすぐお腹が空いちゃうでしょう? もし、駅前の商店街に「富士そば」と「日高屋」と「吉野家」が並んでいたら、中華か牛丼か、どちらにするか迷ってから、僕は日高屋に入るだろう。日高屋にしておけば、丼ものだって選べる。あと、ビールだけじゃなくて、ハイボールやホッピーもある。

いや、話はそこじゃない。かたや、アイコ先生、蕎麦好きである。挽いたり、打ったりするほどじゃないけど、道の駅に寄ると、たいてい地産の蕎麦を買っているし、お昼には、自宅でも外でもよく蕎麦を食べる。僕とアイコ先生が、さっきの駅前の商店街にいたら、ふたりで富士そばに入って、アイコ先生は天ぷら蕎麦をたのみ、僕はカツ丼を注文するだろう。

こんなに蕎麦がうまい浅間のふもとにゐる

山頭火もめずらしく、なんだか肯定感いっぱいの句を詠んでいる。よっぽどうまかったのだろう。
お蕎麦なら値段もそんなに高くはないし、せっかく信州に来たのだから、ここいらの蕎麦屋を順に尋ねてみようということになった。

毎日、蕎麦屋で外食というわけには、金銭的にも食欲的にもいかないから、「ときどき」という程度に2年ほどかけて、簡単に行ける範囲でいろんな蕎麦屋を回った。

  • 小諸城址の駐車場からすぐの「草笛」

  • 中軽井沢駅前の老舗「かぎもとや」

  • 御代田、雪窓公園向かいの「浅間翁」

  • 追分宿の人気店「ささくら」

  • 水と塩で食す佐久の「磊庵(らいあん)はぎわら」

  • 御代田、普賢山落近くの「地粉や」

  • 上田城跡そばの「千本桜」

  • 軽井沢好きの叔母がすすめてくれた「満留井」

  • ちょっと足をのばして、高遠(たかとお)の「入野家」

  • ここに来て最初に行った長倉の「ひょうろく」

  • 幾多の蕎麦職人を育てたという「きこり」

  • 浅間サンラインの「香りや」

  • 国道18号沿い、旧中山道と交わるあたり「追分そば茶屋」

  • 平原のセルフ蕎麦「なごみや」

と、まあ、なんだかんだでアイコ先生に引き回されるているうちに、「今日は、お蕎麦が食べたいなあ」なんて、週に一度くらいは思うようになってきた。「コシが、出汁が、十割が、八割が」だなんて、ソバオヤジの域には達していないし、なりたくもないけど、浅間山麓の水と空気のおかげだろう、おいしさ五割増しで、お蕎麦がいただけている。山頭火の句の味わいも増すというものだ。

そうそう、実は、軽井沢「ひょうろく」よりも先に行った蕎麦屋で、すごく安くておいしいところがあったのを思い出した。軽井沢駅の中にある、あの、釜飯で有名な「おぎのや」だ。かけそば一杯380円なり。軽井沢にいらしたら、カフェもいいけど、お蕎麦もいいですよ。

信州信濃の 新蕎麦よりも わたしゃあなたの そばがいい
都々逸どどいつ、名作のひとつ。映画「男はつらいよ」で渥美清演じるフーテンの寅の売り口上のひとつでもある。
七・七・七・五のリズムにのせて、「ンシュウ ナノノ ンソバヨリモ」と、頭韻を踏み、さらに「蕎麦ソバ」と「ソバ」でも韻を踏む。見事である。

作者不詳

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