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#151 【英語史クイズ】 巳年にちなんで、ヘビ関連と推測されるのは I, N, S, Qのどれ?
問題レベル ★★★☆☆(中級レベル)
2025年にちなんだ問題を。2025年はChinese Zodiacこと、干支では「ヘビ」と考えられている。今日は、干支にちなんだ問題を。なお、今回の問題は田中 (1970) 『英語アルファベット発達史 -文字と音価-』を参照している。
問題
英語のアルファベットの中で、ヘビと関連があるともされる文字は次のどれ?
(a) I
(b) N
(c) S
(d) Q
問題のねらい
WHOのシンボルは蛇遣い座の守護神アスクレピオスが持っていた杖に由来する。ヘビは脱皮を繰り返すため「復活と再生」を連想させることから、健康や生命力の象徴と捉えられる。さすがヘビ。干支に入っただけはあると何故か上から目線で思ってしまう(^^)/。
また、さまざまな神話にも影響を与えるヘビは、文字にもまた影響を与えている。例えば、日本語で普段から使用する文字「虫」はヘビを象った字とされる。
解答
(a) I
アルファベットの9番目の文字 I は、セム語のyōdに相応するとされる。yōdはhandを意味する。よって、(a)はヘビと関連がないため答えではない。
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(b) N
アルファベットの14番目の文字 N は、セム語のnūnに相応する。nūnはアラム語などで「魚」を意味する。しかし文字の形が魚に見えないことが時として指摘されている。
Wikipediaによると、この問題については、ガーディナーという学者がエチオピアやエリトリアの諸言語で使用されるゲエズ文字で「n」の字をナハスと呼ぶことを根拠にヘブライ語 נָחָשׁ naḥaš 「ヘビ」と結びつけて「n」を解釈したとされる。だが、反対する学者もおり、真実はいまだに闇の中である。
しかしそれでは答えにならないので、アルファベットの中でヘビとの関連が出てくる文字は、Nとここではしたい!(お正月なので、やや強引である!)
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(c) S
アルファベットの19番目の文字 S は、セム語のshinに相応する。現在のWに似た文字で「歯」、または、ギザギザが歯みたいに見えなくもない「山」を意味する文字だとされている。よって答えではない。
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(d) Q
アルファベットの17番目の文字 Q は、セムのqōphに相応するとされるが、ヘブライ語のqōph「猿」または「針の目」「耳」などに由来すると考えられている。これも諸説ある状況である。が、「ヘビ」のことは全く出てきていないので答えの候補からは外れる。
ただ文字自体がトグロを巻いたヘビに見えないこともないかもと思い、選択肢に入れてみた。正しくは(?)、文字Qの点は象形的には猿のしっぽということになる。
ちなみに、modzi-gengoさんが紹介された原島(2021)「英語解剖辞典」のp.278では、クエスチョンマーク(?)は、ラテン語questio「質問」の最初と最後の文字からできている説を紹介している。
まとめ
とりあえず曲がりなりにもヘビとの関連が指摘されるのは(c) N だけなので、これを今回は(消去法で⁉︎)答えとしたい。
なお、ヒエログリフでは、角の生えた毒蛇がF、コブラがD(dj)とされ、文字の元となった象形についてみていくのは面白い。
今回のクイズは古い文字のことであり、諸説あるため正確には不明なことも多い。人類の文字の歴史においても、西洋問わずヘビの関与はありそうだなぐらいに捉えてもらえると嬉しい。
なお、堀田先生のhellogにも当然ながら該当する項目#1832, 1833等があるので、お時間があるときはぜひ。
今日はこんなところです。元旦が快晴でよかった!