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#116 トーストの形容詞? そしてパン屋のおまけとは?

WDシリーズ

かなり久しぶりになるが、WDシリーズを。先日のCollinsのWD(今日の一語)はtoastyだった。一見、トーストの形容詞に見えるこの単語。一体何?と思うかもしれない。よく見ると、今回はほっと一息、cozyシリーズのようだ(Collinsでは「今日の一語」では類義語がしばらく続く)。

ToastyはgoogleのNgramでもあまり現れない言葉である。そして、toastに端は発していても、toastとは全く関係ない文脈で使われている。まるで「藍は青より出でて藍より青し」みたいな感じだが(違う)、LDOCEに掲載されているコーパスでは "It was warm and toasty under the blanket."(毛布の中はあったかいね)という文も紹介されていた。

Toastの語源は?

そういえば、toastの語源も調べていないので、早速調べる。英語語源辞典こと、KDEEで調べると、中英語では、動詞は $${\textit{toste}}$$、名詞は$${\textit{tost}}$$だったようだ。印欧祖語$${\textit{*ters-}}$$ ”to dry”が、ラテン語、フランス語と伝わっていき、15世紀に英語に入ったとのこと。同じく*ters-に由来する語としては、thirstやterra(dry land=陸地からか)があるようだ。earthも土という意味があるから、発想は同じである。

乾杯もToast!

英語で乾杯を意味する表現はいくつかあるが、その1つがToast!であるのはよく知られた事実だ。しかし、その由来についてははっきりしない。Etymonlineでも、The Tatlerという1709年の雑誌の24号に載っている、どちらかというと眉唾物のtoastの由来について言及されている。

Tatlerの記事は、ある男が美女(a Toast)の健康を祝って乾杯した際、酒ではなく美女が入っていた温泉の湯を飲むふりをした。それを見た酔っ払いが「湯は要らない。美女をいただく "though he liked not the liquor, he would have the toast."」と冗談を言い、親父ギャグで笑いを誘ったという話である(現代なら、コンプライアンス的にアウトな話だ)。なお、この美女のToastとお酒にパンを入れていた飲み物Toastを掛けていると考えることも可能だ。

なお、ここでtoastが美女という意味になっているのは、「その飲み物を一緒に飲む相手」ぐらいの意味として徐々に発展したと考えられている。

お酒にパンを入れる

中世では、下水が発達しておらず、水が衛生的でなかった。そのため、水の代わりにワインやビールを朝から飲んだとされるが(ビールのことを「液体のパン」と呼ぶこともあったらしい)、ワインの酸味や不純物が多かったので、パンをワインに浸して除外していたという話も聞く。ここまでを調べようとしていろいろと見ていたら、ここまでに書いたのと、同じ内容がMerriam-Websterに載っていた。このパターン、二度目である(まずMWを確認すべし!と心に刻んだ)。

厳しいパン検査

上記のMWの記事も面白いが、もう一つ面白い記事も見つけた。中世のパンに関する記事である。同記事では2点の興味深いことが紹介されている。まずは罰せられるパン屋の絵である(記事中の最後の2枚だ)。

まず絵については、パン職人が出来の悪いパンを首に巻き付けられ、街の通りを引きずり回される絵と、パンの重さ規定に違反したパン屋の絵である。なぜパンを首につける必要があったのかは謎だが(見せしめ?)、罰を受けている男性は深い思考に落ちているような顔をしている(もしかしたら寝ているだけかもしれない)。

経済と農業が発達すれば、規制もかかり、逆にまた、ただ搾取されないように人々の組合こと、ギルドも発達する。パンについては、王が養成所を作るなど重要な事項であり、人類の歴史と深く結びついていると感じる。パン一つをとっても見せしめにするほどの価値が昔あったと捉えるのが正しい解釈なのかもしれない。

高校などで習う表現、baker's dozen(パン屋のおまけ)は、このように重さ検査のときに引っかからないように12個入れるところを13個いれていたことに端を発する。普段は「おまけ」ぐらいで用いる言葉だが、こう歴史を振り返りつつ、表現の由来などに想いを馳せると面白い。

まとめ

Toastyから乾杯の話、パン職人の話など、だいぶ話題がずれていってしまったが、やはり身近な言葉にはさまざまな歴史や文化が隠れていて面白いと感じた。

今日はこんなところです。


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