#135 【英語史クイズ】grain, green, grow, grassのうちで仲間外れはどれ?
問題レベルは★★★★☆(高校生上位〜大学生レベル)
グリニッジと聞いて、「ああ、イギリスの時間の・・・」という人はいても、「ああ、サンドイッチと同じ語尾の!」という人は少ない。そう、サンドイッチとグリニッジが実は同じ-wichを語尾とするGreenwichとSandwichと意識する人は少ない。もしあなたがそうなら、「おめでとうございます、あなたは立派な英語史愛好家です」と評価されること、間違いない。
なお、この語尾については以前の記事で扱った。
今日は、そんなgreenが関係する問題を。問題レベルは★4とした。英語史愛好家の中でも特に語彙史愛好家だったらすぐ分かるかも、という程度の認識である。
問題
次の単語のうち、仲間外れはどれ?
(a) grain
(b) grass
(c) green
(d) grow
問題のねらい
すべて"gr"で始まる単語を集めてみた。ある意味、意味から考えても、同根語では?と思う。でも、1つだけ異なる語をどれか選ぶのは、なかなかに難しい。
解答
選択肢のうち、3つは印欧祖語*ghrē-に遡る。まずgrassは、英語語源辞典こと、KDEEによると、古英語では$${\textit{græs}}$$ または $${\textit{gærs}}$$ だったとのこと。後者は音韻転換が起こったようで、方言に残っているとされる。
grassとくれば、その次はgreenだろう。KDEEsでもgreenの項には「原義は「草色」と想定される」と書かれているとおり、greenは緑こと草色を指す。そう考えると諺 The grass is always greener. は、かなり面白い。文字通りに捉えると、「草は常により草色である」と何だか哲学っぽい、あるいはトートロジー的な色彩を帯びることとなる(色の話題だけに。え?)。
と、ここまで考えると、結局は、grainかgrowかと迷うことになる。印欧祖語*ghrē-に遡るのは?そう、growである。
というわけで、答えはgrainである。grainはラテン語grānunに遡る語であり、この単語が仲間外れとなる。なお、このgrānunは印欧祖語*gre-no-からの流れとされ、ゲルマン祖語*kurnamと繋がり、やがて最後はcornとなったと考えている。このように、grainとcornに何らかの関係性を見出すことができるのは面白い。ただ、冒頭の文字がgからk、そしてcとなったと人々が考えていることもまた、語彙史愛好家的観点からはスルメのように楽しめるネタではないかと感じる。
まとめ
grainだけが印欧祖語*gre-no-に遡る単語である。残りは同根語と考えられる。
ところで最初に挙げたグリニッジだが、公園に天文台について、いつ誰が作ったのかというクイズも作れそうだ。
答えは1675年、英国王チャールズ2世が設立した王立天文台である。今後、近いうちにこのチャールズ2世が関連する話を扱う予定である。
今日はこんなところです。