![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/159575676/rectangle_large_type_2_15a1a85861aaec9a503adf0f77e5239d.png?width=1200)
#121 bookの複数形は昔beekだった? ではfriendは?
宗宮(2024)「歴史をたどれば英語がわかる ノルマン征服からの復権と新生」の古英語の章を読んでいたら、興味深い記述に出会った。
fōt と gōs は現代英語でも foot-feet (足)、goose-geese (ガチョウ) として単数形と複数形を表す。この他にも母音変異型の屈折を現代英語まで残している強者に man-men (男)、woman-women(女)(中略)などがある。book(本)と friend (友人)は古英語 bōc と frēond では母音変異型だったが、現在までに規則化されてしまった。
・・・おっと、最後の方にbookとfriendもまた母音が変化するタイプだったことがさらっと載せられている。こんなときはすぐに堀田先生のBlogである。探してみる。
bookはすぐに見つかった。やはりboc-->becと変化する。foot-feetと同じである。これが今に続いていたら、bookの複数形はbeekだったかもしれない。
ではfrēondは? i-mutation, bec, freondの3語で検索したらあっさりと見つかった(実は後で、Wiktionaryでもあっさりと見つかることが判明)。
こちらをみると、Nominative(主格)において、以下のようになっている。
book: Singular $${\textit{seo boc}}$$ --> Plural $${\textit{þa bec}}$$
friend: Singular $${\textit{se freond}}$$ --> Plural $${\textit{þa friend}}$$
・・・あれ?である。frēondの複数形がfriendになっている? よくみると、単数形の属格(〜にと現在なら目的語にあたる格)でもfrīendになっている。これは綴りの変遷にどう影響したのかな?と新たなナゾを見つけてしまった。ただ、古英語の綴りfrēondが現在に引き継がれていないため、この母音変化を説明するのはややこしく、かつウケにくそうなので、英語史の鉄板ネタとしてはランクインしづらく、今までこのfriendの過去形については、あまり目に止まっていなかったということもあるかと感じた(bookはまだ説明しやすい)。
また、この複数形が現在に残っていたら、friendの複数形はfriendでsがつかずに単複同形と、よく出てくる名詞だけにfriendの複数形が生徒泣かせの分かりにくさを示していたかもと妄想した。英語嫌いの生徒が、今より3%ぐらい増えていたかもしれない(笑)。
あと、念のためもう一度OEDで確認すると、単数形の綴りfriendは16世紀か17世紀ぐらいからだんだんと使用が多くなっているようだ。古英語の複数形の綴りが現在の綴りにどう影響したのか知る由もないが、新たなナゾはともかく、bookだけでなく、friendも昔はfoot-feet形の複数形だったことが分かり、楽しく感じた。
今日はこんなところです。