#130 【英語史クイズ】国名Franceと結びつきが強いものは?
mozhi gengoさんが、地名にまつわる記事を書かれていた。記事はかなり興味深く、楽しく読んだが、辞書を引いた時に1つ気になった項目があったので、その話題に関してのクイズ。堀田先生にもクイズのことは取り上げていただいているので、調子に乗って、クイズ職人の道を歩む。
問題:国名"France"と語源的に最も関連があるのは次のどれ?
(a) ナイフ
(b) 釣針
(c) 槍(やり)
(d) 牡牛
問題のねらい
今回は、frankに関するmozhi gengoさんの記事に触発され、Franceを辞書Wisdom第4版で引いたところ、項目の冒頭にある語源を読んで驚いたことに端を発する。みなさんもぜひ楽しんで頂きたい(^^)/
さっそく解説
FranceはてっきりFrank由来と思っていたが、Genius 6もWisdom 4もFranceの語源または原義として「槍」との関連を明記している。
これに関して、etymonlineでは、Frank (n.)の項目で次のように示している。
これを読むと、元々はFrankが槍、Saxonがナイフを使う人々であったことが想像されるが、“the reverse may be the case.”ともあり、どちらが先かは意見が分かれるところかと感じた。つまり、槍を使っていた人々が「槍の人たち」とよばれるようになったのか、frankと呼ばれる人々が使っていたから「槍」をfrankと呼ぶようになったのか、ということだろう。鶏と卵論争と同じである。
なお、諸説あるものの、上に示した通り、Franceと関連が深いものとしては(c)槍が答えとなり、(a)ナイフはSaxonと関連する言葉となる。
アングロサクソンのAngloは?
ところで、Saxonが話題に上がれば、もう一方のAngloにも興味を抱くのが自然な流れである。先日の堀田先生の放送では、ダジャレも話題になっていたが、複数のソースで、もともとアングロ族が住んでいたアンゲルン半島の形が釣り針(hook)に似ていたからとされている。
地図でアンゲルン半島を見ると、そんなに形は似ていない感じもするが、定説ということだろう。ということで、(b)釣針はAnglo-と関連のある語とされる。
(d)牡牛とは?
さて、残ったのは、牡牛である。この牡牛は国名Italyと関連のある語とされる。英語語源辞典でItalyをひくと、以下の記述がある。
説明を見ると、古フランス語からの借入語だが、Osc.とオスカン語も示されている。オスカン語はイタリア南部でローマ帝国以前に使われていたとされる古い言語(あるいはOscanでその部族)を指す。この言語で牡牛を意味するViteliaに端を発するようだ。vが入っていることで、vaccineなどとの関連が頭をよぎるが、それは不明である。というわけで、(d)の牡牛はItalyと関連があるので、答えとはならない。
まとめ
今回国名であるFranceと関連する名詞として、槍やナイフという武器、釣針という道具、牡牛という家畜を上げた。どれもその言語を使っていた人々の生活と深く結びつく語だと言えるため、ロマンを感じる。知っていても特に何の得もないが、知っていれば少しだけ幸せになれる知識だと思いたい。
今日はこんなところです。
追記:
まさかフランスだけにランス(槍)ってことではない…と信じたい(^^; LRが異なるし、ね。