#45 OEDにトンコツ(n1)とトンコツ(n2)と、トンコツが2つある謎について
基本的にこのブログでは、各辞書のWord of the Day(WD)、「今日の言の葉」を収集し、語源を中心に眺め、愛でる(!?)目的で作られているが、それに付随してさまざまに筆者が興味深いと感じたことを勝手に綴ることをその目的としている。
さて、今日はWDにはなかった言葉トンコツである。実は、世界最大の英語辞書とも言われるOEDのWDはequalify (v) "to make sth equal"(rare)である。で、OEDをひくと、WDの左側にrecently addedという項目があり、右側には、recently updatedがある。この両方にある言葉に心惹かれたりする。今日もまんまと引っかかり、recently added の項目にあったtonkotsuを見て、ああ、ついにトンコツも英語入りかー、みんなラーメン好きねーとほのぼのとしつつクリックした次第である。
・・・なんじゃこりゃー!? 「蒐集家用アイテムとしての煙草入れであるところのトンコツ」と掲載されているが、普通の日本語ではないですよ?と思い、検索。なんと鹿児島弁辞書で発見した。「たましゃつけどっ、とんこちゃさげどっ。」(魂は使えよ、トンコツは提げろよ、の意味?。多分、後半部分は本当は不要で、単に魂を入れろ!の意味かも)だった。
他にも、日本国語大辞典で、このトンコツについては、九州地方での使用例が多々見られると示してあるとの情報も得られた。
では、普通のトンコツは?
では、ラーメンは? 我々に馴染み深い、普通のトンコツは?と思い、OEDを調べるとtonkotsu(n2)ということで、掲載されていた。おそらく上の煙草関連のtonkotsuの方が時代が早い用例が見つかっているので、そちらが名詞の1番目であるn1となったのかと考えられる。
この間はkintsugiもあったしなーとか色々思っていろいろと見てみたら、読売新聞にどのような言葉がOEDに入ったか、掲載されていた。その中にとんこつ(たばこ入れ)も示されており、ホッと一安心(!?)。
きっと、編集会議では、「トンコツは確かによく聞きますね。ラーメンもだいぶ市民権を得てますし!ん!?tonkotsu、2例ありますよ!しかも、ラーメンじゃない!」「えー!?」みたいな感じで、歴史を残すという意味もあり、元の日本語でもrareやobsoleteであっても、両方の定義を辞書には取り入れたという経緯があったのではないかと愚考した。
今日はこんなところです。
今日のWords of the day. さまざまな辞書から。
brainiac (n) 賢い人。語源はスーパーマンのvillainから。説明に、連載が始まったのが1938年で、同名の悪役が1958年に出現し、賢い人を指す一般名詞としての使用が1970年代と書かれており、興味深い。
beachcombing (n) Collinsは海洋学シリーズではなく、単に海関係シリーズか? 「海岸で貝殻や漂流木を収集すること」と定義されているが、etymonlineにはbeachcomberでぶらぶらしている船乗りと掲載されており、違いが面白かった。
absorb (v) ラテン語の「absorbēre(吸収する)」から。「ab-(離れて)」と「sorbēre(吸う)」の組み合わせ。たまにsorbet=sherbetとのつながりを疑うが、研究者の英語語源辞典(KDEE)を引くと、シャーベット(sherbet)とシロップ(syrup)は同根で、アラブ系のto drink(s-r-b-)由来である。シャーベットはラテン語周りで、シロップはトルコ周りで発展したようだ。
tie (v) 古英語の「tīegan(結ぶ)」から。tightとは語源は関係ないが、綴りのgについては、中英語のころに、tieのp.p. tichtの影響で入ったのではないかとKDEEではされている。