#155 【英語史クイズ】 オランダと最も関連があるのは、ごぼう、かぼちゃ、にんじん、白菜のうち、どれ?
問題レベル★★★☆☆(中級レベル)
2024年に、半世紀ぶりに指定野菜にブロッコリーが追加されることが発表された。2026年からということだが、指定野菜は15品目となる。そのことを記念して(?)、英語史クイズの野菜シリーズを実施したい。
問題
オランダと最も関連がある野菜は、次のうち、どれ?
(a) ごぼう
(b) かぼちゃ
(c) にんじん
(d) 白菜
問題のねらい
人間は雑食のため、「雑食動物のジレンマ」に直面する。そのジレンマとは、何でも食べることが出来るがゆえに、何を食べるべきか決めるのが難しいことを示す。
このことについてのマイケル・ポーランの有名な本がある(翻訳も出ている)。野菜もまたどれを食べるか、人類の祖先も悩んだはず。そんなふうに、人類の歴史と深く結びついているだろうからこそ、名称やその歴史もまたたどることができる。今回は野菜の歴史についてクイズにした。
解答
(a) ごぼう
ごぼうを英語で言うとBurdock。英語語源辞典こと、KDEEでは、1597年から。burはトゲのあるイガイガした実を指す(下記写真を参考)。dockは背の高い粗い雑草やハーブの意味(Etymonline)。
G6こと、ジーニアス第6版では「欧米では食用としない」とわざわざ記されているのでオランダは関係は薄いと思われる。
(b) かぼちゃ
英語で言うとpumpkin。KDEEでは1647年または1670年からとされている。語源はギリシャ語pépōn(太陽によって熟された)から。ラテン語、フランス古語「メロン」の意を経て、英語に入ったとされる。これもオランダは関係は濃くないと思われる。
(c) にんじん
英語では、carrot。1538年から。語源はhead, hornの意からとされているので、形が「角」を想起させるところからこの名となったと考えられる。
もともと人参の色は、白色または紫色だったのが、現在の色となったのは、オランダで品種改良されたからと言われることが多い。以下Wikipedia英語版より抜粋。
なぜオランダ人が関わるかというと、南フランスのオランジュに伯爵領を持つWillem van Oranjeが建国の祖とされているからである。Oranje(蘭語オラニエ。英語ではOrange)は、もともとアラウシオと古く呼ばれる地域だったが、音が変化し、さらに12世紀ごろに果物Orangeと結び付けられたとされている。そのため、オランダの国色はオレンジ色とされ、人参のオレンジ色の逸話も生まれたとされる。
以上のことから、オランダと最も深い関係があると思われる野菜は(c)にんじんとなる。よってこれが答えとなる。
ちなみにβカロチンの「カロチン」は、人参から抽出されたことにその名が由来する。
(d) 白菜
白菜は、英語で言うとnapa cabbageまたはChinese cabbage。napaは日本語の「菜っぱ」からきている。ちなみに、英語版Wikipediaのnapa cabbageの項には、「Hakusai(白菜)はこのページに。Hokusai(北斎)と混同しないように」と冗談のような注がつけられている。
当然ながら、オランダとは関連は薄い。
まとめ
今回のクイズでは、特定野菜15品目の1つ「にんじん」に注目した。もともと薬として食されていた白、または紫のにんじんが、品種改良され、現在のオレンジ色となった。そして、白や紫だったにんじんが、そのオレンジ色となるまでの経緯には、オランダが関与していると考える人も多い。
現在でも、farmers' marketにいけば、様々な色のニンジンが育てられ、売られている(下をクリックすると、様々な色のニンジンが見ることが可能)。
「1本でもにんじん🎵」と歌いつつも(古い)、既に6世紀の頃には絵に描かれていたにんじんと人類の長い歴史に思いを馳せてみてもいいのかもしれない。
今日はこんなところです。