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#164 【Review】効果のある単語学習法とは。内田(2021)が面白かったという話。
たまには本職ネタでも。今回は単語の学び方について。
内田(2021)「中高の英語学習における語彙学習方略」がとても興味深かった。単語をどう覚えるか迷っている人には参考になるかもしれない。
中学生と高校生に英単語の学習法を調査した本論文をざっくりまとめると以下になる。
単語を何度も繰り返して覚える学習法が人気だった。
年齢が上がるにつれ、単語の関連等を考えて行う勉強法(関連づけ方略)が効果があった。何度も繰り返して覚える方法は効果が見られなかった。
効果のある学習法を採用するなどの工夫が必要。
以下、少し長くなるが説明する。
単語の学習法
単語を覚えるのに苦労している人は多い。ただ、よく「単語は書いて覚える」方法を取る人が多い印象を持つ。論文では「反復方略も一時的にテストを乗り切るにはある程度機能するため,有効性を高く認識しやすい」可能性があることを示している。
まず内田(2021)では、先行研究から学習方法を35種類に絞り、調査結果から、語彙学習の方法(方略)は3種類に分類した。関連づけ方略、表現・活用方略、反復方略である。詳しくは論文の7枚目(p.372)に表で示されている。
関連づけ方略としては、10の方法が示されている。例えば、「1 つの単語のいろいろな形(名詞形・動詞形など)を関連させて覚える」「よく使われる接辞や語幹を意識的に覚える(-tion, pre- など)」などが例示されている。
表現・活用方略は、7の方法があり、「新しく学んだ単語を,頭の中で状況を想像して使ってみる」「その単語の意味を表す絵を見たり描いたりする」などがある。
反復方略は、4つの方法が示され、「何回も繰り返し単語を見たり書いたりする」「手と頭が完璧に覚えるまで何度も書く」などがある。
参考になること
本論文では、語彙サイズと学習法の相関を調べている。今回は関連づけ方略を取っている生徒の語彙サイズが大きいことが示されている。また逆に反復方略は語彙サイズが大きくなる効果が見られないか、マイナスになる結果も出ていた。
なお、相関なので、一応は関連づけ方略をとっているから語彙サイズが大きくなるかどうかは不明、つまり因果関係はないことには留意すべき、ということも頭に入れておいた方がいいかもしれない。
同時に、中学初期ではまだ関連づけ方略などの複雑な処理が行えない可能性を示唆するなど、とてもよく考えられた説明もあり、参考になるいい論文だと感じた。
また、学習法としては、同意語や反意語を一緒に覚える、単語が出てきた文脈や例文と一緒に覚えるなど、深い処理をすることは、それだけ記憶に残りやすくなることは確かだろう。論文の7ページに載っている、効果があるとされる関連づけ方略を試してみる価値はあると思われる。なお、語源中毒としては、ぜひ、「よく見る接辞や語幹を意識的に覚える」という方法も試していただきたい!(^^)/
注意書き
本論文は中高生を対象とした研究なので、大人に対しての結果ではない。単語学習について、英語教師の中でも信頼が厚い、中田(2023)「究極の英語学習法」などでは、次の点が強調されている。
効果的な学習法は、「どのような単語のどのような知識を覚えたいか」によって変わる。高頻度語と低頻度語では学習法は異なり、また例えば、綴りを覚えたい場合と発音を覚えたい場合で学習法は変えるべき。
高頻度語は、たくさん目や耳にして、実際に自分で使うことが予想されるので、文脈がある中(読んだり、聞いたりして)覚えるのが向いている。
低頻度語は意味がわかれば良いことも多く、和訳が1つに決まる場合も多い(oxygen=酸素など)。単語帳で覚えるのも効率的だ。
以上のように、単語等の学習法は単語の種類と自らの目的によって異なるので、様々な学習法を知っていることは得になる。
まとめ
以上、内田(2021)「中高の英語学習における語彙学習方略」についてレビューした。中高の英語教師にとっても参考になるし、学習者としても参考になるかと思われる。
なお、学習方法については、自分が好きな学習法と効果のある学習法は区別した方がいいことに注意が必要だ。好きでも、伸びない方法もあれば、その方法は好きでなくても、効果が高い場合がある。結果にコミットするかまで確認しながら、良い学習法を探すといいかもと思う。
なお、語源中毒としては、上記に示したように、効果が高いとされた関連づけ方略に「よく使われる接辞や語幹を意識的に覚える(-tion, pre- など)」が入っていることに、英語史との関連を見つけて、ニヤニヤしてしまった。
以上、今日はこんなところです。なお、内田(2023)と単語の学習に便利なサイトについても、今後紹介したい。