元化粧品研究者が考える「使われないコスメも気持ちもアップサイクル」
使い切れずしててしまうカラーコスメを絵の具・雑貨創作・DIYなどに使える色材へとアップサイクルすることで、再び色を蘇らせたい。
このようなモノのアップサイクルをきっかけに、社会に存在する画一性や固定概念に対して日頃から感じているネガティブな感情に折り合いをつけ、人々が自身の意志と選択を大切にしながら歩んでいける世界をみんなと一緒に作っていきたい。異なることに対する恐怖・嫌悪・不安・優越感・劣等感などを緩和すれば、きっと個性あふれる彩りある世界になると信じています。
プロジェクト発起人「田中寿典」のこれまで
―自身の根幹にあるもの―
はじめまして、私は株式会社モーンガータの田中と申します。
私は、大学院の修士まで植物遺伝子の研究をしておりましたが、就活するか博士まで進むかの岐路に立った際、自身を見つめなおす中で、自分を突き動かしてきた根本的な価値観を再認識しました。
他人が経験できなさそうなことがしたい。
この思いが根幹にあり、これまでの人生選択に大きく影響を及ぼしてきたのです。そして、私が目指したくなった世界は、「化粧品の世界」でした。その理由は、2012年頃の当時の化粧品ユーザーの大半が女性で、男性である私がこれまでの人生の中で経験しえなかった「化粧」に魅了されたからです。
化粧は、不思議なものだなと幼少期に感じていました。というのも、母親が化粧している様子を観察していた時に、段々と印象が変わっていく顔に、楽しさや嬉しさという感情が表れていたからです。化粧品が、人に幸せな感情を与えていることに昔から興味を抱いていました。
そして、当時の就職先大本命はアルビオン。ユーザーからの評判も良く、消費者の求めているコトに寄り添いながらも、モノづくりへのこだわりが感じられ、自分の思いや考え方を商品に乗せてお客様に届けられるのではないかと感じたからです。
―メイク開発に魅了―
大本命のアルビオンの研究職として、採用が決定!!2012年入社という就職氷河期に運を使い切ってしまったのではないかと思うほど、嬉しかったのを覚えています。希望通りいくとは思いませんでしたが、メイク製品開発のグループへと配属。
メイク品開発を志した理由は、①「他人が経験できなさそうなことがしたい」②メイク品は「視覚・聴覚・触覚・嗅覚をフルに使って楽しめる」からです。多くの感覚を通じて堪能できるということは、多くの刺激を融合させて商品のメッセージを伝えられると思ったのです。
―価値観を変革する貴重な経験―
大好きなコスメ製品開発に携わり、やりがいを感じながら七転八倒する日々の中で、自分でもワクワクするようなモノを作れなくなっているマンネリ化を実感し、焦りや不安を抱きました。しかし、ある人の言葉が最大のヒントとなりました。
「いろいろ付加しようとしすぎなんじゃない?」
溶けるように自分自身の固定観念が崩れ去りました。化粧品の開発には大きく二種類があり、全く新しい新製品開発と既存品のリニューアル開発があります。新製品開発は、一から組み立てていけるので、開発者自身の技術や(使う原料の)嗜好などをフルに活かせますが、リニューアル開発に関しては、既存製品のレシピがあります。
そう、私は、リニューアル開発において、他の開発者の色(技術や嗜好)がふんだんに盛り込まれている化粧品のレシピに自分の色を付加的に詰め込んできていたのです。それでは、既存品からの変化が少なく、そのリニューアル商品を使うお客様も面白くないはずです。
そこで、私が実践したことは、とてもシンプル。
いらない要素を差し引きし、必要な要素を加える
一度単純化してみてから、より引き立つ要素を加えるやり方です。これは意外と気付きにくいものであり、実践するのは、言葉以上に難しいものです。そして、この考え方は、自身の価値観にも大きく影響を与え、独立して今の事業を実施するきっかけとなりました。
SminkArtができるまで
―コスメ研究者が目の当たりにした廃棄問題―
思いを込めて開発したコスメですが、一般消費者の「使い切らないまま捨ててしまう」というお声をよく耳にしていました。この現状に対して私は「もったいないけど、仕方がない」という気持ちでいました。
一方で、化粧品企業内にも、試作品・開発途上品などの大量のコスメ廃棄が存在することも目の当たりにしてきました。異物混入などの理由ではなく、化粧品として使える状態で捨てられています。
年間推定廃棄量1万6,000t
※弊社独自調査より
現在、多くの企業からコスメが廃棄されており上位5社で年間1万6,000tほどあるのではないかと想定しています。コスメの廃棄と私たちの生活は繋がりにくく想像もしづらいですが、使用されている鉱物原料の枯渇も懸念されていることを考えると、本当に無関心のままでいい問題なのかと危機感を抱いています。
現場で見てきたからこその「もったいない」という純粋な想いと共に、折角これだけ色味があるのだから「何か他のモノへと転化できないのか」、さらに「転化する行為自体を楽しむツールは作れないのか」と日頃から思案するようになりました。
―食品や衣類だけじゃない、コスメにもある「もったいない」をアップサイクル―
日々考える中で、「いらない要素を差し引きし、必要な要素を加える」ということをしてみたのです。「使い切れず捨ててしまうコスメからコスメの要素を引き、色材の要素を付け加える」ことで、コスメ本来の独特な色味や光輝感を活かせるのではないかと。
つまり、「カラーコスメを資源化してから、またコスメにリサイクルする」のではなく、「カラーコスメを色材へとアップサイクルする」という考えに至りました。コスメからコスメを作り直しても衛生上困難で、ましてやコスメという既存の枠組みから脱せず、市場価値としてはあまり意味がないと感じました。
また、多くのエネルギーと資源を活用して、既存製品と同等の価値を提供するリサイクルや使い方を変えるだけのリユースよりも、資源を効率的に活用しつつも新規価値を付与できるアップサイクルが、モノを有効利用する上で一番好ましい方法なのではないかと思っています。
―magic waterの誕生―
度重なる試行錯誤を実施した結果生まれたのが、カラーコスメを絵の具をはじめとした色材へと変身させるSminkArtの『magic water』です。
粉物のコスメは、肌に塗る目的で作られているため、汗で落ちないように粉の一つ一つが油でコーティングされています。そんな水に溶けにくい粉物のカラーコスメを水に溶け・うまく分散して・乾いた後に膜になって・万が一肌についてもリスクが低い色材へと変えるのがmagic waterの技術です。
洗剤成分のような界面活性剤はフリーで、化粧品OEM(委託)メーカーに依頼して製造しており、配合している原料も全て工業用グレードのものではなく、*化粧品グレードのものとなります。メーカーや店舗で廃棄されてしまうコスメや、ご自宅に眠っているコスメをリスクの少ない形で、活用いただける品質を目指しました。
※医薬部外品原料規格等に準じる原料が多く、工業用グレードとは比較にならないぐらい厳格に管理されている原料
思いを共有できる素敵な出会い
―2021年2月16日12時2分―
自社ホームページからのお問い合わせを確認すると、何やら熱い思いが添えられたメールが。私が感じてきたことや今抱いている社会の課題感と類似しており、すごく共感できる内容が記載されていました。これは、一度お話してみたい!素直にそう思いました。
名前は伊藤真愛美さん。ブランドマーケティングエージェンシーのFICCという企業にお勤めで、我々の事業に対して共感し、連絡をせずにはいられなかったと、冒頭より熱のこもった会話が繰り広げられ…いつの間にか同士のような感覚に陥ってしまいました。
―消費社会への疑問―
よく二人の間で繰り広げられた議題は、「化粧すること」「コスメの存在意義」「消費すること」について。近年、「女性は化粧をする」という前提でコンセプトが謳われていたり、コロナ禍になってからも、メーカー側からマスク下でも付けられる口紅を提案されたり、オンラインでの打合せ等でも化粧することを半ば強制されたりするケースが出てきています。
これは、本当にコスメの存在意義に沿ったものなんでしょうか。あくまで、これまでの画一性や固定観念をあてつけ、消費を促すためだけのものなのではないかという疑問を感じます。
消費者の中には、その枠組みに入らないと不安になる人もいます。そのような状況で、結局使い切れずに捨てられてしまうコスメが大量にあるわけです。実際に、独自で5,423人を対象に調査してみると、4,702人(86.3%)もの人が使い切れず廃棄していると回答し、ほとんどの人が使いきれてないことが分かりました。
ここには必ず、企業側と消費者側のそれぞれの考え方にミスマッチがあります。ただ企業側の自己満足だけを押し付けるのではなく、どのようなことが求められているかを知るために、消費者ともっとコミュニケーションをとる必要があると考えます。
一方で、消費者である皆さんももっと消費に対する疑問を持ってみませんか?
「使い切らないまま捨ててしまう」
これは仕方のないことなのでしょうか。
私自身コスメを開発してきた張本人ですし、これまでそこから目をそらしていたことに恥ずかしさを感じます。だからこそ、この課題にアプローチしていきたいのです。
プロジェクトに掛ける思い
「コスメを色材へとアップサイクルする」という取り組みにも根付いている「いらない要素を差し引きし、必要な要素を加える」という価値観は、「いろんなモノやコトに対して抱える自分の中の矛盾した気持ちや考えから、引き算・足し算をすることで、画一性や固定観念に縛られない自分自身の方向性が見つけられる」ことに繋がると考えています。
画一性や固定観念は、先人が守り、残してきた規則やルールや慣習だと思います。それには、それなりの理由があり、大事にすべきことも多々あると思います。しかし、個々人の自由意思による選択機会を奪ってしまっている無意味な枠組みがあることも事実だと考えています。
コスメではなく全く別のモノやコトでも一度、画一性や固定観念に引き算や足し算をしてみてほしいのです。「画一性に対して自分が異なることによるネガティブな気持ちを抱えている」人や、「つまらない固定観念に付き合わされて嫌になっているけど、皆そうしてるから我慢している」人がたくさんいると思っています。
矛盾した気持ちを抱えながら生きる苦しみを知っている人が、俯瞰的な目線を持ちながら、自分に素直な気持ちや考えを持つことができたとき、そしてそういった人が増えたとき、もっともっとこの世界は、多様性や差異性を認知し尊重し合える、彩りのある世界になると強く信じています。
画一性の中では色は生まれません。なぜなら一つに納まろうとするから、比較できるようなものがなく、色の概念そのものがないのです。しかし、人には、それぞれ個性があり、はっきりとした色を持つ人もいれば、薄い色を持つ人もいます。色は押し付けて持つものではなく、その人が自由気ままに身に着けているものです。
だからこそ、画一性の無色の世界に押しつぶされることなく、皆さんが自身の気持ちや考えと折り合いをつけていきながら、自由な意志(意思)で選択していく素晴らしさを感じられ、自分の色を持つきっかけをこの「COLOR Again」プロジェクトで作っていきたいです。
使わなくなったコスメの色材へのアップサイクルでなくてもいいです。何か自身が日頃から感じていることに、一度真剣に向き合ってみませんか。企業様だけでなく、一般個人様も是非ご興味頂けたら、ご連絡ください。
▼お問い合わせフォーム▼
https://bit.ly/3yyDYJ1
プロジェクトのTwitterアカウントも開設しました!ぜひフォロー&シェアいただけると嬉しいです。
https://twitter.com/coloragain_
たくさんの人との出会いがあることを楽しみにしております!