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何にメモを取るのか? - 美術館でのメモの取り方【最新版】

 美術館に行ったとき、その場では「面白かった」「刺激を受けた」などと思えても、美術館に行ったあとの食事、買い物、別の展覧会の印象に押し流され、

「えっと、私、何を見たんだっけ…?」

 と、思い出せなくなることもしばしば。その場限りの満足感に終始する、それでも自分の記憶に残ったものだけを重視する、というのも一つの考え方ですが、あとで人に話したり、noteに書こうと思ったりするとき、「覚えていない」は致命的にもなりかねません。

 そんなときに役立つのがメモを取ること。
 美術館でのメモは単なる記録で終わらず、作品との対話をするためのツールともなり、自分自身の感情や思考を省察、観た印象や記憶を強化する…そういった、非常に強力な手段となります。

 では、どのようにメモを取るべきなのでしょうか。
 基本的に正解はなく、また、メモを取るうちに自分なりのルールが生まれ、発展していくものだと私は思っています。ここで紹介するのは、あくまで私の一例に過ぎませんが、メモを取る際の参考にしていただければ幸いです。


何にメモを取るのか?

メモ帳・手帳

 後述するスマートフォンや音声入力・ボイスメモなど、デジタルメモの普及も進んできた昨今ですが、一般的な公共美術館・博物館では今でも「鉛筆に紙の手書き」を想定しているケースが圧倒的かと思われます。別に時代遅れというわけではなく、メモを取る効率性、機動性の高さや記憶の定着という観点からも、現在も有力な手段でしょう。ボールペンはもちろん、シャープペンさえ使えないというのは不便にも見えますが、作品保護の観点からはやむを得ないところです。
 私自身も基本的には「メモ帳と鉛筆」というスタイルで、感想文用のメモを取っております。

 美術館によっては、鉛筆やクリップボードを貸し出してくれるところもあります。無人でもない限り、『筆記用具を貸し出さない』というケースは聞いたことがないですが…鉛筆持参ですと、家で鉛筆を削る、という作業が加わるため、そういうのが煩わしい、わざわざ鉛筆削りを買いたくないという方は借りてしまったほうがいいのかもしれません。

作品リスト

 個人的には以前、メモ帳持参ではなく、展示室の入口なんかに置いてある作品リストにメモを取っておりましたが、現在はあまり使っておりません。基本的にはメモ帳を使用し、作品リストに書き込むのはメモ帳を忘れた時の代替的な手段という位置づけです。

 確かにメモ帳を省略すれば手荷物が一つ減りますし、リストにはタイトル等の情報もあらかじめ記載されており、一見効率的に見えたのですが、全ての作品にそういうメモをとっているわけではないため、あとで見返した時、不要な情報が多いことも確か。左上から書くメモ帳とは違い、リストの片隅に書くことになるメモはその書き方もアトランダムになってしまいがちで、結果記憶の流れが追いづらく、いつの間にかあまり使わなくなってしまいました。作品リスト自体はピックアップしますが、そこに書き込むということは今はしません。

 三菱一号館美術館や森美術館など、SDGsやコストの観点から作品リストを提供していない美術館も一部にはあります(PDFで、ウェブ上で提供しています)。

 現実的にはほとんど見返さないですし、結構かさばるため、持ち帰る側としても実はちょっと負担になります。一回、スキャンして保管する、ということを考えた時期もあるんですが、スキャンしたところでやっぱり見返さないので、今は用が済んだらなるべく処分するようにしています。

スマートフォン・音声メモ

 最近では、スマートフォンを使ってメモを取ることも一般的になっています。手書き派を自認する私とはいえ、コマーシャルギャラリーとかですと紙にペンは大仰に見えてしまうこともあるため、スマートフォンや音声メモを活用することもあります。

見た目のスマートさも時には大切

 もちろん注意点もあります。
 写真撮影OKなどで、スマートフォンの使用が普通になっている展示室ではそれほどトラブルはありません。しかし、著作権等の理由で写真撮影が禁止されている場合、スマートフォンを手にしていることが他の来館者や係員に誤解される可能性があります。
 勘違いする周囲が悪い、という見方もできますが、カメラを撮影禁止の絵画に向けるなどといったことは控えていくべきでしょう(Googleレンズを使う場合等もありますが、そのルールは館にあらかじめ確認したほうが良いように思います)。

 音声メモも同様です。
 入力スピードという点では圧倒的なボイスメモですが、展示室でスマートフォンを口に当てて話す姿はまるで通話しているようであり、やはりこれも係員お近づき案件となってしまいます。

 ボイスメモはそこそこ囁き声でも問題なく入力できるのですが、静かな展示室ではそれでもやっぱり周囲の迷惑ということにもなります。

 私の場合、音声入力が必要な場合は美術館・ギャラリーを出たあとに使用することが多いです。近くにベンチがあればそこに腰掛けたり、あるいは電車を待っている最中、通話するフリをして入力することが多いでしょうか。
 もちろん歩きスマホは×。音声メモを使う際は通常の電話と同様、周囲を確認のうえで使用しましょう。

図録

 最後に、自分が目撃した、少々変わったケースとして、「図録を先に購入し、そこに書き込む」という方法を紹介したいと思います。

 たしか2019〜2020年に巡回していた『きたれ、バウハウス―造形教育の基礎―』(東京ステーションギャラリー他)だったと思いますが、そこに来ていたある方が、この方法でメモというかノートをとっていました。

こんなにはでっかくなかったですが…

 えてして図録のサイズは大きいもので、そういうものを携行しながらメモをとるというのもなかなか大変です(この時のバウハウス展の図録は比較的小型)。毎回このために2000〜4000円する図録を購入するのも現実的ではありません。しかし、展覧会における一つのテーマ、作家をより書く考察したい場合、こういう手段こそが一番効率が良い…という考え方もあると思います。

 代替案としては、「大きな付箋でメモを取る」という方法はあるかと思います。探してみると大判サイズの大きな付箋というのも市販されており、そこにメモを取り、図録を購入した場合はそこに貼り付ける…という方法はアリかもしれません。
 展覧会によっては作品リストが単なるリスト以上の分厚さ、詳細さを持っていることもあります。「作品リスト」はゴミになりがちと先ほどは書きましたが、保存価値のあるリストであればこうした書き込みもそれほど無駄にはならないかもしれません。

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