「ブランクーシ 本質を象る」(アーティゾン美術館)
思えば私が美術のことを勉強し始めた時、そのときに初めて知った名前の一つが今回のブランクーシ。いわゆる抽象彫刻ということもあり、手がかりの乏しさを感じる人もいるかもしれません。
写実彫刻をやっていた頃はロダンに傾倒し、そのロダンに激賞されるほどの腕前だったそうですが、「大木の下ではなにも育たない」と言い、ロダンの影響下を離れ、独自の道を歩むことになります。それは単純なフォルムかつ、石や金属といった素材との調和を目指したもの。石の彫刻はごつごつと、金属の彫刻はつるつると流麗に仕上げます。
ただし、目指したのは単純な「単純化」ではないということ。文献にGoogleレンズをかざすと「単純さは芸術のゴールではない、しかし、本質に近づくことで、知らず知らずのうちに単純な表現を達成する」という趣旨の記述が出てきます。だからなのか、ブランクーシの金属彫刻の、裏面などをよく見るとザラザラした部分も残っていて、そこに"工業製品"で終わらない魅力を感じました。アーティゾンではおなじみの《接吻》も良い感じ。
また、ブランクーシは「作品」としての写真を多数残しております。単なる彫刻作品の資料用ではなく、写真作品としての再解釈を加えたもので、こちらもなかなか乙だなと思いました。
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