【画像6枚+α】「ライトアップ木島櫻谷」(泉屋博古館東京)
三つあるうちの、最初の展示室1がとにかく美しい。
そこには5点ほどの屏風と水墨画掛軸(今尾景年《深山懸瀑図》)、写真撮影に関するパネル、あとはベンチが2つあるのみですが、そのベンチに座って、この後の作品や予定も一旦かなぐり捨て、腰を据えて長居したくなるような雰囲気があります。強いて言うならベンチをもう少し入口近くに置き、5点の屏風を眼中に収められる位置にしてほしかったぐらい、完成度の高い展示室でした。
そんな感じでベンチに座ってぼんやり眺めているだけでも十分楽しいのですが、作品単体で観てももちろん素敵。特に屏風って構造的に奥の絵と手前の絵が混在しているのですが(伝わってるでしょうか…)、鑑賞時にそれを意識するのは櫻谷の時だけ。展示室3にある《獅子虎図屏風》(1904)では、奥で眠る虎と手前で四本足で立つ獅子という対比を感じます。また、光琳のオマージュでもある《燕子花図》(1917)ではその立体性と写実性の組み合わせで、実物の花壇が現前したかのよう。ディティールも素晴らしく、厚塗りなどで湿雪や花弁を立体感たっぷりに表現されているのも見事です。
今回は解説パネルも親切でした。
京都画壇をざっくり分けると、円山応挙をルーツとする円山派と、呉春をルーツとする四条派とに別れていて、円山派は線を増やすことでより実態に肉薄した表現を目指すのに対し、四条派はむしろ線を減らし、その制約下で写実表現を目指すというもの。次のように分類できると思います。
これは京都画壇に限らず、芸術鑑賞全般で応用できるポイントだと思いました。「この作品は線?それとも面?」を考えることは一つのヒントになるような気がいたします。
つくづく面白い画家です。「良い展覧会だったなぁ…」と今でも振り返るぐらい良かったんですが、惜しいのは今回分の図録が無いこと。また機会があれば、是非ともで訪れたい展覧会です。
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