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Evil Key

 5月に3週間ちょい、8月も合計3週間弱、そして今月も入院スタートだったりするので、今年だけでも既に7週間ほど、病院のベッドで過ごしていることになる。
 基本的には個室にはせず、別料金のかからない大部屋で暮らしている。手術直後などを除き、基本的には誰かしらと同じ部屋にいるというわけである。そして大病院であること、必ずしも長期入院というわけではなく、検査やナントカ療法で1泊だけ、なんてケースも珍しくないため、人の入れ替わりはだいぶ激しい。
 数えているわけではないが、7週間ともなるとかなりの数の方と寝泊まりをしているんじゃないかと思う。

 そうしてみて強く感じるのが、いびき率の高さだ。これを書いている現在も大部屋にいる4人中2人が大きめのいびきをかき、1人は今は静かだが寝るときまあまあな寝息を立て、そして残りの1人はこの状況をスマートフォンに書き留めている。
 かく言うその1人も体重89kgの頃はガンガンいびきをかき、朝には喉を乾かして起床していた。今もいびきをかいている可能性はあるし、人のことを言えた義理ではない。ただ、あまり「他人と一緒に寝る」を経験しない独身者でもあるため、「そんなにいんの…?」と面食らってしまったわけでもある。

 ただし後で調べてみると、いびきをかく人は男性57%、女性40%と、じつは結構多いものらしい。

 たとえば男性4人の相部屋として、その4人共がいびきをかく確率は10.556%、全くのレアケースというような数字でもない。いびきをかく父が娘や母から爪弾きにされる…ファミリーもののベタなシーンだが、その母や娘も(父ほど迷惑ないびきでなかったとしても)どちらかあるいはその両方がいびきをかく可能性は64%あるというのはちょっと興味深かったりもする。

 閑話休題。
 もちろん限度はあるが、周囲のいびきが原因でほぼ徹夜だったとか、そういう経験は今のところない。基本的に何かしらの投薬や点滴を受け、眠りやすいというところもあるだろうし、いざとなれば無音のイヤホンを耳にさしたまま眠るというような「対策」もある。気にならないことはないが、事前の予想に反し、なんだかんだ眠れてしまっている。壁時計の秒針でも眠れなかったりする昔に比べれば、だいぶ大きな進歩だ。
 「寝なきゃ」と思ってかえって寝られなくなるというパターンはよくあったが、今は「寝られなかったらしょうがない」と割り切ることができる。そう割り切って(就寝前のスマートフォンはあまり良くないとされるが)読書なり「2048」みたいな単純なパズルゲームなりをしているうちに片目及び両目が落ちていき、やがて眠る体制が仕上がっていく。

 他人のいびきがうるさいと(うるさいな…)と思わないことはないけれど、その感情を怒りとして他人に向けてもどうにもならない。特にいびき自体は不可抗力でもある。睡眠時無呼吸症候群なんていうものが潜んでいたりもするし、むしろ(大変だな…)と思うことのほうが多くなった。
 これは東海林さだおのエッセイに学んだ部分もあったりする。

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