「南条嘉毅|地中の渦」(KAAT神奈川芸術劇場)
薄暗い会場、その中心に設置されたのは三つのスクリーン。
中央には幕越しに星を模した電灯が輝き、そして左右には自然、横浜の風景映像、そして大崎清夏さん(詩人)によるテキストがリフレイン。バックには波の音、そして阿部海太郎さん(蜷川シェイクスピア、『碁盤斬り』などの作曲家)によるアンビエントミュージックが流れます。
確かに心地よさを感じたものの、この時点では「芸術としては普通かな…」と思ってしまったのも事実。しかし、左右のスクリーンがゆっくり暗くなったかと思いきや、今度はスクリーンを後ろから照らし、ツボや扇風機などといった、後ろに置かれていた「もの」の影が、映像と混ざり合います。
映像と影絵の組み合わせ、これにはだいぶ意表を突かれました。
「歴史」が"影"として、そして現在が映像という"光"として眼前に現れる、なんとノスタルジックな世界。
この「もの」たちの正体、それはここKAAT神奈川芸術劇場の場所にあった「山下居留地遺跡」の埋蔵品です。要は外国人居留地跡で、このエリアの「歴史」を何よりも雄弁に語ってくれます。加えてここは埋立地ではなく(現在の横浜の中心部の大半は埋立地)、居留地以前、またそれと並行して存在していた歴史もあったことが当然想像されるところ。本展では市の歴史博物館の手を借り、使用されていたと思われる農機具・漁具・生活道具が用いられております。
中央の「星」のスクリーンも裏に人が入れるようになっており、数カ所の光から、一人は三人となりスクリーンに投影されます。中には横浜の地形を模した砂山があり、先ほどの影絵とは違う、ジオラマのような世界が展開されておりました。
さらに裏の「鏡の間」も印象的。回転を続ける鏡が薄暗い中でスポットライトを反射し、まるで宇宙の中にある太陽を見ているかのよう。
光と影、表と裏、太陽と星。
対照的であるこれらを巧みに組み合わせ、そして融合した、素晴らしい世界が展開されておりました。
ちなみにこの展覧会、元々KAATのスタッフが2017年、奥能登で南条さんのインスタレーションを観たことがきっかけで、それから7年かけて実現した展覧会だったんだとか。作品の性質上、奥能登の展示を観ることはカタログ上でしか叶わないようですが…今回、横浜の「いま、ここ」を共有できて良かったです。
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