「フランシス真悟 - 色と空間を冒険する」(茅ヶ崎市美術館)
アメリカ、そして鎌倉をメインに活動を続けるフランシス真悟の、国内初の大型回顧展。
画面の形こそマレーヴィチ等を連想する抽象絵画ですが、たとえば〈Infinite Space〉(1,2)の場合、カンバスの隅に重ね塗りの形跡が残っています。よく見るとメインの画面も丁寧に塗り重ねられたハケの後が残っており、まるで夜明けのさざ波を眺めているかのような気分。画面上下にある塗り残しはまるで波打ち際…手仕事の部分が作品に対する想像力をかき立ててくれます。
〈Interference〉(3,4)は絵の具が特殊で、観る位置や光の角度などによって作品の色彩が微妙に変化するのが面白いです。〈Into Space〉(5)は中央の面に近い「線」から色が派生していく、前2作に比べると動きのある作品。反対に〈Blue Silence〉(6)は画面の100%をある青一色で染め上げる単純なものですが、カンバスの横を観るとこれも重ね塗りが施されております。こちらは筆跡がほとんどうかがえず、こちらに迫ってくるような説得力・重厚感が印象的でした。〈Daily Drawing〉(7)はコロナ禍で、アトリエにも行けない期間中、自宅にある画材を用いて制作されたもの。こちらでは唯一具象っぽい作品もいくつか見られました。
茅ヶ崎市美術館でも一番小さな第3展示室に展示されていたのは〈Bound for Eternity〉(8,9)。様々な色彩・画材の「波」が盛り上がり、そして沈んでいく様はアンビエントミュージックを聴いているかのよう。部分的には坂本龍一『andata』(「async」収録)のような、色のせめぎ合いを見ているうちに胸がざわつき、そして収まっていくようなイメージです。1枚目みたいな写真が撮りたくなる気持ちはわかるので長居はしませんでしたが、何度もリピートして鑑賞したくなる作品でした。
目で聴く、優しく美しい音楽を浴びたような気分になれる展覧会でした。
エピローグとして、最後(コインロッカーの隣)に置かれていたのは、誰にも管理されていないホームページ上にあったという、バグったかのような海岸の定点映像《Visions of Color Ⅰ》(10)。これも一種の廃墟美なんでしょうか、原色に近い画面とは対照的に、心穏やかになっていく「余韻」を感じております。
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