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「特別展 魂を込めた円空仏―飛騨・千光寺を中心にして―」(三井記念美術館)

 個人的にも大好きな円空仏。しかし、こうしてまとまった数の円空仏を観るのは初めての体験でした。

 基本的には稚気に富んだ魅力を楽しむもので、技術面"だけ"に関して言えばそこまで優れているというわけではないと思います。画像の両面宿儺像や親指大の小型作品など、「ひょっとしてものすごく上手なんじゃ…?」と思わせる作品はあるものの、一方で身体がほぼ棒だったり(-_-)みたいな顔面の、かなりラフな作品も存在します。木材にも釘の跡や割れたり削れたりした形跡などもあり、必ずしも良い木材ではなく、むしろ廃材に近い木材を使っているケースも多く伺えます(好んで廃材のみを選んだわけではなく、由緒ある材木を使用した作品も展示されております)。
 しかしラフだからこそ、鉈やノミを振る勢いの良さが際立ちます。そもそも円空が12万とも言われる造仏に取り組んだのは発願、言わば衆生救済のために課した自らへの修行であり、傷跡の様なノミの跡には、ただならぬ緊張感がただようものもあります。制作時期が明記されているわけではにないのですが、まるで日記のように、その日その日の彼の心境が表現されているようにも感じました。

一部。三十三いるうちの、三十一が展示されております

 また、これまた写真の三十三観音などは病気の際、民衆がそれを持ち出し、病気治療の願掛け――言わば道具として使われた側面もあったそうです。そのせいか、作品によっては表面が激しく摩耗し、判別が困難になってしまっいるものも見受けられます。以前本で読んだのでは子供のおもちゃに使われたという話も聞いたことがありますし、12万あるうち、現存するのが5000しかない、というのも納得のいく話です(5000残っているというだけでも十分すごいんですが)。
 保存を旨とする博物館の発想としては卒倒しそうな話ですが、民衆の生活に寄り添う形で使われてきたからこそ、その作品の"人生"を感じられる部分もあります。ただ400年前に造られたというだけでなく、その後400年を生きた、その事実もまた円空仏の魅力を深めてくれるように思いました。

 ちなみに、円空の代表作である《両面宿儺》像が銀座で展示されるのは今回が初めてだそう。顔面タトゥーのラスボス…というのは『呪術廻戦』の話で、飛騨の伝承ではむしろ英雄のように取り扱われてきた人物だったようです。「両面」だというのに顔が二個、並んで描かれているのは円空の「らしさ」ですが、逆だった髪の毛や炎の光背、そして手に持った斧など、勇壮たる力強さを感じさせる作品です。

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