南インドでアーユルヴェーダを受けて妊娠した話
私も夫も同じ産婦人科医。
元々は、大学病院で勤務医として働いていました。
当時はお互いにかなり忙しく働いていたため、
自然な形で妊娠すれば良いなとは思いながら
真剣に妊活に取り組んでいたわけではありませんでした。
実際に何かお互いに何か健康に問題があって、不妊ということで悩んでいた訳ではありません。
でも今思うと、不妊症で真剣に悩み始める手前の段階だったと思います…。
(こちらに関しては、追々ストーリーの中で綴ります)
私達は、結婚して4年、その間は子供を授かることは一度もありませんでした。
ただ、お互いの仕事も少し落ち着いたところだったので、そろそろ子供が欲しいねと考え始めていたタイミングではありました。
職場を離れ、2024年に1月から約2ヶ月間インドに滞在し、アーユルヴェーダ医学における産婦人科領域の勉強と共に、アーユルヴェーダによるプレコンセプションケア(妊娠前のケアのこと)を受けました。
そしてインドで治療を受けた後、比較的すぐに妊娠が分かりました。
今回は私の妊娠について自分なりに振り返り、あくまで一つのストーリーとして、これを読んでくださった方に何か良い気付きをもたらすことができたらと思い綴らせて頂きます。
まず妊娠に至った要因として、大きく3つに分けて綴りたいと思います。
①実際のアーユルヴェーダの治療が効果的だった。
まず、アーユルヴェーダにおいても通常の病院と同様に、Drとの問診から始まります。
この問診がかなり濃いもので、月経のことなど、通常の産婦人科で聞かれること以外に、
食事や睡眠について、排泄状況や、食欲について、どんな気候や環境で生活しているかなど、ライフスタイル全般のこと。そして心の状態についてなど聞かれます。
問診だけでも30-40分かかります。
もし私達が妊娠しにくい原因が明らかにあった場合、(例えば私の場合、内膜症や、月経不順、PCOSなど。夫の場合は無精子症など。)
この場合は、これらの治療をすることが目的となりますが、
今回私たちの場合は、お互いに健康体であったため、アーユルヴェーダDr.に妊娠前ケアの治療をお願いしました。
健康体とはいっても、治療開始前には確認のため、血液検査でホルモン数値の一般的検査と、夫は精液検査を受けることになりました。
このように必要な検査データを事前に確認することは、現代医療と共通していて、
アーユルヴェーダにおいても、検査が必要な時は、現代医療の力をしっかりと借りています。
お互い産婦人科医でありながら、特に日本ではブラタイダルケアなど受けたことがなかったので、
まさかのインドで初めて自分達の検査データの結果を知るという展開になりました。笑
検査の結果、特にお互いに異常値はなかったので、予防的ケアとして治療が開始されました。
アーユルヴェーダの治療には西洋医学と同様に内服薬と外用による治療があります。
薬は、自然由来のものからできていて、何千種類というハーブを調合させ、作られています。
薬の形状は錠剤のものから、ペースト状や液状のものと様々です。
まず2か月の滞在中は、毎日朝昼夕とDrから処方されたアーユルヴェーダの薬を内服していました。これらの内服薬は、卵子と精子の質を高めるため作用のあるもの。最近、サプリメントでも流行っているアシュワガンダは、精子の質を良くするとされ、夫の処方薬に含まれてました。
その他、外用の治療を受けましたが、これは毎日ではなく、夫は10日間、私は2週間程度の期間でスケジュールが組まれました。
治療のイメージがつきにくいかと思いますが、基本は薬用オイルや煎じ液を使った治療で、この使う薬剤にも様々な種類があり、それぞれの体質に合ったものが使用されています。
代表的なものにアビヤンガ(オイルマッサージ)があり、こちらは最近、日本でもアーユルヴェーダサロンで受けられるものになります。
その他、アーユルヴェーダの治療で有名なものとしては、パンチャカルマと呼ばれる、最大の心身の浄化療法があります。
パンチャとは5つとういう意味で、
①ヴァマナ(嘔吐療法)
②ヴィレチャナ(緩下療法)
③バスティ(浣腸療法)
④ナスヤ(鼻洗浄)
⑤ラクタモークシャ(瀉血療法、ヒル治療)
これら5つの治療をまとめてパンチャカルマといいます。
なのでパンチャカルマを受けるとういうことは、これらすべての行程を受けることになるため、1か月以上の入院が必要となります。
今回私が受けた治療の中には、このパンチャカルマの1つであるバスティがありました。
このバスティにも様々な種類がありますが、
具体的には、肛門から薬用オイルを入れ、排便を促す治療になります。
これは夫も同じ治療を受けました。
(生殖器がある骨盤部は、3つのドーシャの中でもヴァータが支配しており、生殖機能を整える=ヴァータを整える目的でバスティが行われます。)
この他、婦人科系ならではの治療として、
Uttarbasti(ウタラバスティ)というものを受けました。こちらは子宮口から細いチューブを入れて、そこからシリンジでオイルを5mlほど注入する治療にになります。
(現代医療においても、卵管造影検査といって、子宮内に造影剤を入れる検査があります。これは卵管閉塞がある患者さんにとっては、卵管を開通させる治療的意義もあり、検査によって妊娠率の向上にも繋がるとされています)
婦人科の診察と同じように、内診台で治療を受けます。
実際受けてみての感想は、受ける前はかなり緊張していましたが、私の場合は痛みが全くなく、特に不快感などもありませんでした。
夫が受けた治療の中で、1番印象的だったのが、
Avagaha(アヴァガハ)といった治療。
これは薬草風呂の半身浴になります。
リウマチや腰痛などに適応があるようですが、今回はプレコンセプションケアを目的として治療を受けました。
②ライフスタイルの変化について。
まず食事に関しては
滞在中は毎日、ベジタリアン生活。
私達は大学病院に滞在していたので、
通常の患者さんたちも入院しています。
食事は患者さんと同様の病院食を毎日朝昼晩、決まった時間帯に食べていました。
病院食といっても、食事に重きが置かれるアーユルヴェーダ。
その美味しさは、病院食とは思えないくらい格別です。
毎食、出来立てほやほやの温かく、野菜たっぷりの美味しい食事が提供されます。
主食は米を中心とした、イドリー、ライスヌードル、ドーサといった南インド料理になります。様々なスパイスを用いていますが、辛みは少なく、日本人にも合った食事内容でした。豆料理も多く、たんぱく質はそこから摂取することになります。
朝昼晩の食事以外に、
昼前11時と、夕方16時ごろに、ティータイムがあり、そこでは甘くて温かいチャイと一緒に甘いスイーツが提供されます。
このスイーツも、白砂糖まみれのものではなく、ジャガリといった栄養価の高いお砂糖や、バナナ、米粉、ギーなどを使った健康的なもの。
これは一つ発見だったのですが、夕食前に甘いものを食べることで、
空腹になりすぎることがないので
夕食は重たいものではなく、軽いもので済ますことができます。
アーユルヴェーダでは、食事の比重は
昼>朝>夕の順で勧められていて、
夕食は消化に軽いものが提供されます。
そして、アーユルヴェーダにおいて、食事と一緒に冷たい飲料を摂るのはNG。
なぜなら、消化力が落ちてしまい、代謝機能が適正にはたらかないと考えるからです。
そのため、滞在中は白湯を毎日飲んでいました。
私達が訪れたのは1月から2月にかけてですが、外は夏のように暑い気候です。
ですが慣れてくると、暑い日でも白湯が美味しく感じてきますし、便秘が改善して、腸もスッキリとした感覚になりました。
毎日の食事の時間が固定されてるので、
滞在中の間は、勤務医時代には考えられないような、規則正しい生活リズムで過ごしていました。
朝は6時頃には起床し、夜は22時には就寝。良い睡眠、消化に負荷がかからない食事を摂って、自然を感じながら過ごす毎日でした。(大学病院の周囲は、大きな川や緑に溢れて、自然豊かな場所になります)
勤務医の頃はお互い月5-10回の当直をしながら、
食事や睡眠は、毎日同じ時間帯になんてことはできず、仕事中心のバタバタな毎日。
こうした生活リズムの改善だけでも、私たちにとっては大きな変化でした。
③お互いの心にゆとりができた。
ここからは、少しプライベートな内容になります。
最初に少し記載しましたが、私達は不妊で悩むことになる一歩手前まできていたと思います。お互い病気を抱えてたわけではないですが、
そもそも子作りをするという段階で、夫婦生活の雲行きが怪しかったところがありました。
お互いに当直もしながらの生活であったため、タイミングを合わそうとも合わせることができず、逆に合わせたとしても、仰々しさが増してしまい、義務感や焦る気持ちの方が強く、リラックスした状態で妊活はすすめられていませんでした。
あのまま、お互いのライフスタイルに変化がなかったら、少なくとも楽しく妊活するとういうことはできず、真剣に不妊で悩んでいたかもしれないな…と思います。
実際どうなっていたかはわかりませんが、
職場を離れ、お互い心に余裕ができた結果、夫婦生活にもプラスの変化があったことは事実です。
以上、簡単ではありますが、
私達が今回経験した体験記になります。
現代社会において、夫婦共働きで不安や焦りを抱えながらの妊活をして、様々な悩みを抱えているカップルは、沢山いると感じています。
中でも私達と同じように、医者同士の夫婦は特に多いのではと思います。
実際にインドまで来て治療を受ける。
ということも、一つの手段だとは思いますが、
治療を現地で受けたからといって、
必ず妊娠が保証される訳ではありません。
夫婦で長期のお休みも必要になってきますし、
中々現実的に難しいところがあるかと思います。
ただもしインドに興味があって、
治療を受けてみたいという思いがあるのであれば
一つの方法として、お勧めをします。
インドまで行かずとも、
お互いのライフスタイルを見つめ直すこと。
そして一度、日常生活から離れてみること。
このことをするだけでも、視界が開けてくることがあるのではないかなと思います。