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【小説】REVEALS #6

マジックの評価とボランティアの評価

レイジとタイガがSNSで話題になっている。
あいつらいつの間にこんなことしていたんだ。
悔しいけれど、鼻が高くもある。

Twitterで「#リモートマジック」がやたら目に付く。ボランティアイベントでのマジックが1.4万RTもついている。あの時はタネが何かは分からないと言っていたのに。ちゃっかりリモートマジックを成功させているじゃないか。
出し抜かれた。

また、ボランティア活動という響きもあいつらをの株を上げている。特別良い奴らでもないのに。人気のせいで評価に尾鰭が付いている。いや、タイガはいいやつだ。俺と大差が無いのにレイジの株が不当に上がっているのに腹が立っているのだ。

「これ、礼司と大我だよね。すごーい。」

くそう。
しかし、当の2人はあまり鼻にかけている感じがない。スカしている気がして鼻につく。何やら2人で話している。俺が入る隙がなくなってしまったようだ。きっと、今の俺はあいつらが何をしても腹が立つ。

どうやら2人でまたボランティアに行くらしい。もちろんタイガがレイジを誘っての事だ。あいつの株が益々上がっていく。全然イイやつでもないのに。タイガのお陰なんだからな。
あー、ムカつく。

「イベントだけ参加って思われちゃうよ」

「実際そうなんだから良いだろ」

「良くないよ、それに僕たちは有名人なんだよ。客寄せパンダでも良いから、みんなの役に立たないと」

レイジもタイガの無垢なひと押しには負けてしまう。誰もあいつの純粋な言葉を無碍には出来ないのだ。

「慎一も行こうよ、都合どうだい?」

ほらな。断れない。
あいつも若干それをわかっててやっている気がする。人たらしな所がある。

「ねぇ、竹下も今週の日曜日空いてる?」

な。言った通りだろ?


隣の市は俺が思っていたよりも片付いていなかった。人が足りていないのが俺の目から見てもわかった。そして何よりも土臭い。
ここまで足を運んだこと。被災地のこの現実を知ったこと。こんな俺でも簡単に行けたこと。少しでも他人の役に立てたこと。色々な要素が重なって、次の休みもタイガに誘われ自然と足を運んでいた。誰かの役に立っていることがこんなにも嬉しくなれるなんて知らなかった。

タイガは当たり前のように俺たちをボランティアチームとして扱っていた。マジックの話題は自分から出さず、こないだのマジックショーの事なんて本当にこれっぽちも鼻にかけていない感じだ。ちょっとでも嫉妬していた自分が恥ずかしくて、打ち明けたい気持ちに駆られた。
もちろん現地では、子供から大人まであいつを受け入れていて、あの街のヒーローになっていた。それでもいつもと態度が変わらないのだ。天性の純粋か。

レイジは意外なことにおじさん連中に好かれていた。マジックでモテようとする大人たちに教えを乞われたり、おちょくられながら溶け込んでいた。
俺もレイジには反射的に対抗しようとしてしまうが、いつの間にか毒気を抜かれていた。ボランティアチームのメンバーとして対等に扱われていたからだろう。あいつも若干俺に対して素直になっている気がする。

次の挑戦

オレにとって北川天馬の衝撃が過去のものになりかけていた頃だった。

ワイドショーが北川天馬に関するニュースを取り上げたのが話題になっていた。パフォーマンスショーを開催するとの事だった。その売り上げを寄付に回すという事で話題になっていた。
何となくだが、ボランティア先でのイベントでオレ達がバズっていた事もあって北川天馬がオレ達を意識しているような気がしていた。青年期特有の自意識過剰な精神がそう思わせているだけかもしれないが。

そんな事を思っていた折に、TwitterのDMに当該のチャリティイベントの運営からオファーが来ていた。もちろんパフォーマーとして呼ばれていた。ボランティア活動をしているという事でも有名だからという事であった。チャリティイベントにはうってつけのキャストだというのだ。

しかも、このイベントの目玉がオレ達と北川天馬のリモート現象対決だという。他にも色々な有名人ががこのイベントでパフォーマンスを披露する。そんなイベントの目玉が、オレ達だ。

このイベントはネット配信で生中継されるらしい。テレビ程では無いだろうが、かつてのように拡散が再現することが出来る。勝負は制限時間内にどちらがトレンドのより上位に上がれるかで決まるというものだった。

正直とても嬉しかった。北川天馬のリモート現実を見たあの時から、どこかでこうなる事を期待していた気がする。

あの瞬間、自分の手元に奇跡が起こらなかった為に、恨みにも近い感情を抱いていた。あの疎外感と、それに復讐したい気持ち。
しかし、その感情のおかげで、あの現象を再現する事ができたし、ボランティア先の人たちとも仲良くしてもらうことが出来た。大我達とここまで楽しい事をやってこれた。
心の澱は消えないが、俺の手元に奇跡が起きなくて良かったとすら思う。

「大我のところにもDM来た?」

「チャリティイベントのやつ?うん、来たよ。もちろん出るんでしょ?」

「なんだ、大我も出るつもりだったのか。最近はボランティア活動にばっかり熱中してたからマジックはもう良いのかと思ってたよ。」

「いじわる言うなよ。ちゃんと練習だってしてるんだから。でも、対決なんだろ。勝っちゃっていいのかな?」

こいつ、勝てると思っていたのか。
なかなかの大物だな。

「そりゃ勝っても良いだろ。そうやって書いてあるんだし。でも向こうだって企画してるんだ。お互い手の内を知ってるわけだから、わざわざ負けるような事はしないと思う。何か勝てるアイデアでもあるのか?」

「それはこれから考えるんだろ。」

実はDMを受け取ってから、ワクワクが止まらない。身体中が震えている。ビリビリと脳に電流が走っている。何らかの脳内物質が頭中を満たしている。


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