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20年前の覗き見で得た記憶をフラッシュバックさせてきました『眠れる森』

祖父母の家の居間には、当時にしては大きいテレビがあった。私はテレビと反対側にある和室に布団を敷いて寝ることになっていた。和室と居間は横開きの扉で仕切られている。多分小学生になりたて、くらいだった私は早々に寝かせられ、大人たちはいわゆる「夜のゴールデンタイム」のテレビを楽しむのだった。

そんな時に流れていたのが『眠れる森』だ。いまいち眠くなりきらない私は、和室と居間を隔てる扉の隙間からそのドラマを見ていた。数ミリの隙間をほんの少しだけ開けて、片目だけで。夢中で。大人は私を差し置いてなんて面白そうな(そして恐ろしそうな)ものを見ているのだ!ずるい!

恐ろしいサンタクロースが出てくること。中山美穂と木村拓哉が緑あふれる森にいること。陣内智則が怖くて怖くて仕方がなかったこと(これで私にとっての「THE・悪役」の最初の記憶は陣内智則となる)。結婚式の結末と真犯人。血。タイトルバックが物凄く良くできていること。

我ながらドラマに関する記憶力が異常なのでは、と思うくらいだが、必死の覗き見で見たドラマは相当に印象深く、しかも記憶としてかなり正確であった。ということが、20年越しのいま、判明しました!!!!

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ミステリーってこんなに面白かったか……と唸らせるほどの怒涛の展開で、すっかり没入し数日で一気観してしまいました。ただただ純粋に「面白い……気になる……あー終わっちゃう!」と観られるドラマが最近なかったので、物凄い満足度と見応え、そして後味でございます……。

とりあえず、当初完全なる「ストーカー」な伊藤直紀が、あまりに美しすぎる木村拓哉!という設定が流石にズルすぎて笑う!どんな経緯があるにしても、伊藤直紀の存在はビジュアル抜きでは成立しない。という点で物凄くフィクションで、完全なるファンタジーです、と最初から潔く示しているのが良い。

ビジュアルに加えて職業設定が素敵すぎて唸る。まず、木村拓哉が舞台照明。肉体労働の泥臭さが前提にありつつも、アウトプットが美しすぎるお仕事が最高に効果的である。さらに中山美穂は全てのカットがお洒落に美しくキマる植物園。最近のドラマはどうしてもオフィスワークが多くて、仕事場面はエモーショナルな画にはなりづらいわけだけど、このドラマは仕事の場面でもファンタジーな世界観を作り上げます。素晴らしい……。

とにもかくにも画が常に美術的で素敵。眠れる森そのものも幻想的で、森の緑と芝生の緑というシンプルなグラデーションが出てきたり、仲村トオルの父親が描く絵もまた幻想に輪をかけていて、どこまでも演出と美術に手をかけているのがよくわかる。とはいえ現在のテレビの解像度でここまでのことをやるのは相当厳しいだろうな……とも思う。テレビの解像度が低かったからこそ、雰囲気を練り上げて映したいところだけを映す、というのができてたんだろうな。今はどうやっても背景がくっきり映ってしまって、特段見せる意図のないものも写り込んでしまうし、それをハショればスカスカな画になってしまうのでなかなか厳しいよね。

ドラマの展開自体は王道のミステリーという感じ。私は真犯人はこのひとだったはず……と遠い記憶を探りつつも、全くその動機やら展開やらを覚えていなかった。なので、あれ?やっぱ違ったかな?とか思いながら美奈子ちゃんと一緒に記憶をたどっていくような、変にリンクするような気持ちで観ました。

しかし後半あまりにも全員可哀想な展開で辛かった……。ひじょーに怖いドラマだとは記憶していたけど、こんなに悲しいドラマだったとは。一番悲しいんだけど、ぱっと見あんまり本筋に関係なさそうに発生する事件が結末とリンクするのが構造的に美しすぎて興奮しました。

あと大好きすぎて一気観するなかでも絶対に飛ばさなかったタイトルバック&主題歌。Aメロ→Bメロにいくとこの「ぷぅぅぅん……」がいいよね。そしてサビ直前の4カウントの音と映像とさらに色々、の気持ち良さが凄い!誰だって最終回まで見たら天才的だぁ……、と感激してしまうようなタイトルバック!感覚的にも構造的にも美の巨人!いやー、これを超えるタイトルバックにはまだ出会ってないように思います。こういうのを今のドラマでも作って欲しいなぁ……!

ラストシーンは、えっ……!となるタイプのものだけど、きちんと丁寧に見れば分かるように描かれてるんですね。ラストシーンがこれだけ心に尾を引くタイプのドラマも久しぶり……。ドラマは終わったのにいつまでも反芻してその後を想像して、とぐるぐるしてしまう。






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