![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/25195688/rectangle_large_type_2_b4c5e21aefa53d62aa89576aa09914b9.png?width=1200)
生きるための新世界づくりを「柳の木」に託す秀逸なオープニングストーリー(「野ブタ。をプロデュース」第一話レビュー)
大好きなドラマの再放送が始まり、愛さずにいられないドラマになりました『野ブタ。をプロデュース』。ティーンだったあの頃とは違う眼差しでこのドラマを見て新たに気付かされることも沢山あり、その新たに気付かされることがめちゃめちゃ刺さる。
さて、第一話。金管楽器によるファンファーレ的なオープニングを聴くだけで心が高鳴ります!これを朝の目覚ましにしていた時代もあるくらい。今日もまた新たな一日が始まるぞ、な気分に包まれる曲ですよね。
しかし改めて見ると第一話の彰はやばいな?修二・彰・信子、それぞれ最終話まで見てから一話に戻ると、ちょっとキャラクターがまだ安定しきってなかったのが分かるはず。3人とも第三話辺りになるとだいぶ落ち着いてくるけど、とにかく一話の彰はやべーだろ。「ぶりぶりっ!」じゃねえよ。完全に激しい酔っぱらいというかイッちゃってるというか、アッパーなサムシングを摂取された方のような強烈さ。そりゃ修二君もうざがるわ。今や(当時からそうですが)超ウルトラ美形俳優なイメージしかない山下智久のまじでやばい動き(ヒラヒラ〜て階段降りてくるのやめてくんない!)が見られるのは貴重なんだけど、これ本人的に黒歴史レベルになったりはしないのかな。笑 もちろん彰は素晴らしいキャラクターで大好きなんだけど、一話だけ切り取るとあっけにとられちゃうよね。
信子もまた、ちょっとブレが見えるような。お弁当を落とされて生ゴミを捨てにいくシーン。修二相手に妙にすらすらと喋るのが初見の人でもちょっと違和感があるみたいです。「あれ、普通にしゃべってんじゃん」となるわけだけど、以降は割と三人組のときでもそれなりに喋りにくそうにしているので調整したのだろうな。さらに修二のナレーションで「この世の全てを恨んでいるような」と信子が紹介されているけど、一話こそ信子は最底辺に暗いけど、案外優しさと強さが見えてくるのは序盤からだったりする。これも多分、当初の予定以上に修二ががっつり主人公として苦しむことになったので、信子は比較的この後めきめきと成長を遂げていくことになる。
そして主人公、修二。誰よりも人気者で、イケてて、そして誰よりも孤独で悲しい主人公である。学校全員ガキにしか見えない、カラオケに誘われ「もち♡行く」と言いつつ「100年待っても俺は行かねえよ」と心で呟く、他人への嘲り100%な修二君。と書くと極悪非道な冷酷人間に思えるのだが、実は第一話から修二君はめちゃめちゃ優しいんだよね。信子の机に仏花を供えようとする坂東を「ダサくない?俺たちはシュールな笑いを求めてるじゃん」とちゃんと止めに行く。いやそれまじで100点対応すぎない?絶妙に正義感ふりかざして空気読めないみたいな状態に陥ることなく、坂東もちょっとご機嫌ななめになる程度で解決。すご。
いじめ問題って、「見て見ぬフリをした自分が嫌い」な話になりがちだし、この修二のキャラクターからするとその方面もありえるのかなって思うけど。ちゃんと最初から止めにいってるし、信子に優しい。ブタちゃん縫い付けてあげるなんて優しすぎる。ただ修二の圧倒的な哀しさは、その自分の優しさをまっっっったく信用していないことなのだ。信子のプロデュースも、彰との友情も、まだ自分の中の偽善的な何かだと思っている。思おうとしている。自分で作り上げたクールなキャラクターに当面、自らを縛り付けることになる。そして冒頭の独白が一体どの時点での修二なのか気になるよね。「あ、ここから先の話は、あんまりしたくないです……」これが物語の後であれば彼の孤独は未だ解決していないことになるし……。
第一話の最大の謎は「柳の木」。『野ブタ。』は学園ドラマでありながらファンタジックな要素を毎話ふんだんに含んでいるのですが、ファーストシーンから柳を持ってくるトリッキーさは今見るとちょっと凄い。「柳の木に触らないと学校、行けないんです。そう決めちゃったんです」も最後まで具体的な理由も種明かしもない。
ただ、修二の心の支えであったこのみすぼらしい木が、修二と信子のつくる「新しい世界」「自分が生きていける世界」を探して生き続けることの象徴になって、これから始まる冒険への強い強い希望になっていく。屋上で、修二が呟いた諦念の「生きてかなくちゃいけない」から、柳を見つめる土手の上で口にする意志と励ましの「生きてかなくちゃいけない」に変わっていく。テーマが生き物であり人間でない「植物」に託されている美しさと、修二と信子の二人乗りの自転車がきゅっと土手を駆け上って開ける映像の美しさもあいまって、素直な感動が呼び覚まされる。
「柳の木」が以後のストーリーに関わるかどうか忘れてしまったけど、ハートフルなシーンで度々流れるピアノを中心とした曲の名前が「グリーン・ウィロー」。物語全体を通じて繰り返されるひとつのテーマ曲がこの柳にちなんでいるのもいいですよね。この曲大好きでずっとピアノで弾いてました。
いいなと思ったら応援しよう!
![カレーごはん](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/4737921/profile_04b3f0a4288de8d548915658b52e275d.jpg?width=600&crop=1:1,smart)