日本人の奥底に根付いている『清き明き心』を僕らは忘れてしまった
僕ら日本人は、「清らかであること」を美徳と捉えることが多い。
清らかさとは、曇りなく晴れ渡り、爽快で清々しい(すがすがしい)状態を指す。
正直さや誠実さ、思いやりの精神や忠実な姿勢を忘れずにいることが、僕らの誇りとなっているんだ。
その反対に、裏切りや卑怯な行い、私利私欲を尽くした思いやりのない行動は「きたないこと」として、忌み嫌われるだろう。
こうした感覚は僕らの中で当たり前に存在していて、その根底にあるのは『信じる気持ち』なんだと、僕は思う。
ただし日本以外の感覚からすると、「人は裏切るもの」であることが常識の地域もあって、その根底には『不信の文化』が根付いている。
例えば、日本の親は子どもに対して「嘘をついてはいけない」と教えるけれど、中国では「人に騙されるな」と教えることが多いらしい。
僕らが中国政府の強硬姿勢に対して嫌悪感を抱いてしまうこともあるのは、こうした文化的背景によって、無意識に「きたない」と感じてしまっているのかもしれない。
古来から日本人は「きたないこと」を忌み嫌い、それを”穢れ(けがれ)”と捉え、清らかな水で身を清め、穢れを祓う(はらう)ことで禊(みそぎ)をしてきた。
現代でも、不倫をした芸能人や罪を犯した有名人に対して『禊』を求めるように、その文化の痕跡は色濃く残っていて、僕ら日本人が誠実であることを追求するほど、こうした「きたなさ」を排除しようとする動きも強まってしまうのかもしれない。
「清らかであること」が良しとされるのは何も日本だけではなく、例えばキリスト教の文化圏でも、洗礼によって罪を洗い流すという通過儀礼がある。
このように、僕ら人間は『清潔感』を本能的に求めている気がする。
ただし、清潔という言葉は「清らかさ」と「潔さ(いさぎよさ)」で成り立っているのに、僕らは『潔さ』を忘れてしまいがちだ。
あらゆる罪に対して「許せない。謝れ。」と固執し、他人の不倫に口を挟むような野暮な行いを重ねてしまう。
「清らかであること」と「正しくあること」は別物なのに、清らかじゃないお前は正しくないんだと、人格を否定し、存在を消そうとしてしまう。
”穢れ”とは内面的なもので、心の汚れなのに、罪を犯した人の存在自体が「汚れている」とでも言わんばかりに。。。
そもそも不倫は法律違反を犯したのわけでなければ、社会的な罪ではない。
愛すると誓った相手を傷つけてしまったのだとしたら、その不誠実さや思いやりのなさと本人が向き合い、当事者同士で向き合うことが何より大切だ。
『あらゆる罪を潔く水に流す』という、キッパリとした粋な行いを忘れてしまった僕たちは、はたして日本人を名乗れるだろうか?
清潔感のない人は「野暮ったい」と言われるけれど、他人の課題に首を突っ込んで粘着するその姿勢には、思いやりという清らかさもなければ、水に流すような潔さもないだろう。
「粋」の対義語は「野暮」
僕ら日本人が古くから大切にしてきた『清明心(清き明き心)』が、今こそ必要なのだと僕は思う。
「明き心」とは、純粋であるということ。
ピュアな気持ちを忘れないということだ。
ここでいう「明るさ」は、ずっと笑顔でいるとか、ポジティブでい続けるとか、そういうことではなくて、「自分の心に嘘をついていないか?」ということ。
わんぱくな子どもみたいに、自分の心に正直に、純粋さを持って生きるということだ。
だからこそ、ネガティブなことを引きずらないさっぱりと明快な男気や、人情に厚く、どこか色気が漂う”粋”な心を、忘れたくないなと思う。
「清潔さ」と「潔癖さ」は似て非なるもの。
あらゆる不潔や不正を極度に嫌うような潔癖さは、現代のような「どんな生き方が正しいのか分からない時代」においては、生き辛さを深めてしまうと感じている。
今の混沌とした時代において悩みを抱えている人の多くは、「潔癖であることが清らかで美しい」と思いこんでしまっているのかもしれない。
「きたないこと」を排除し続けたその先に待っているのはきっと、自分以外の人を信じることができないという、真っ暗で醜い世界だ。
暗闇の中にいれば、周りのことも、自分の姿さえも見えなくなってしまう。
誰かが優しく手を差し伸べてくれた時、そうして差し込んだ明るい光を信じ抜くということを、忘れずにいたい。
己の中に蓄積した”穢れ”を水に流し、心をピュアに整えていこう。
・・・読んで頂きありがとうございました(*^^*)
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【軟水のたそがれ】
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