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14日目、『覆面短歌倶楽部 vol.壱』を読みました

私も参加した、覆面短歌倶楽部(@fukumen_tanka)のPDF『覆面短歌倶楽部 Vol.壱』の気になった歌を、Twitterで引きました。その感想のまとめです。ツイートをそのまま持ってきてるので短めの評(というかコメント)になってます。

覆面剥ぎのあとに作者名を書き加えたいと思います(というかそのためにまとめた)

追記:作者名書き加えました!!!

あ-01 「アーアーアー引っ越し便」をみならって初回の一番目を獲りにゆく/山口綴り

最初何のことか分からなかったのですが、そういうことw「初回」っていうのはこの企画の初回ってことなのですね、わたしもちょっと「あ」から始めようかなって思ったりしましたが、結局普通になってしまった……

あ-08 あったか~いお茶がどんどん冷えていく産声はまだ聴こえてこない/和三盆

後半の冷え具合。赤ちゃんが生まれるのを待っているのでしょう。もっとわくわくする気持ちの方が強いような気がするのですが、この歌ではめちゃくちゃ冷えてる……

あ-11 あばばばば遅れてばばば走るばばばばばヘリコプター乗っけてよ/アナコンダにひき

ちょっと好き。「ヘリコプター乗っけて」って状況、なんかすごいな……しかも置いてかれてるし……

あ-12 雨の日の雨が邪魔してごみの日のごみが上手に呼吸できない/金森人浩

ごみも呼吸してるっていいな……

い-04 いろはすを3割飲んで「こんにちは」水分量で宿る生命/シギショアラ

分からない。分からないけど好き。人の何割は水とかそういうのと関係してるのでしょうか

か-05 かすてらの端ばかり食む獣にも人にもなれぬままのぱらいそ/toron*

ぱらいそだ……!ぱらいそ……!!(二度見
韻律がめっちゃいい

toron*さんの二首はどちらもうたの日で見るようなtoron*さんの分かりやすいきらきら、な歌とは少し違って、殴ってくる要素があって、すごく好きでした。ガツンとくるようなきらきら。こんな顔もするんだな、toron*さん、って見せつけられた気分です。場所によって作風を変えてるんだなぁ……。

き-03 昨日今日明日が溶けゆくパレットで見つかりましたか正しい無色は/深山七夜

わたしたちは無色を探していたんですね。なにものにもならなくていい歌だと読みました

く-03 暗闇に違いがあると言う君はシーツの冷たい部分を好む/okuno

なんだろう、シーツの冷たい部分を好むって、がめついというか、常に冷たいところを探してばたばたするような醜さがあるような気がしてたのですが(私がそうだから)この歌の君はかっこいいなと思いました……

こ-03 高校で茶道部だった川崎の口からカーセックスと聞こえた/たろりずむ

茶道部だけ韻律から浮いてて、いい。茶道部、いい。面と向かって言われたんじゃなくて、誰かと川﨑が話してるのを偶然拾った感じじゃないかな。だから主体の聞き間違えかもしれない。

たろりずむさん、Twitterで自分で自分に評を書いてたような、ひゃー、してやられたな……

こ-09 「この先は光が消えてしまうけど涙がなにか役に立つはず」/はすおみ

めっちゃ好き。鍵括弧めっちゃ効いてる。

さ-02 風冴ゆる草野をゆけば牛たちの声が流るる月光の牧/朝比奈諒

「月光の牧」の表現が好きすぎる。綺麗さと牧場のリアリティが上手く中和してると思う。

さ-04 さみしさの隙間できみを好きになり柑橘系のリップクリーム/葵

「さみしさのすきまできみを」の部分がほんとに「さみしさ」の間に「きみ」があるような韻律でめちゃくちゃ掴まれる上の句だった。リップクリームで受け止めてるのも上手いなと思う……

し-07 死にたいと思う割には信号のない歩道にてせかせかと膝/あの井

「せかせかと膝」のシュールさが好き。

し-12 手榴弾なげられた時の対処法見つからなくて生きるの怖い/きさらぎ なる

私も怖いです。どうしても考えてたら生きていけないから考えないようにしてることってあります。地震とか、常に怯えてるわけにはいきませんから。でも確かに手榴弾を投げられる可能性はゼロではない。

せ-05 絶妙なアンバランスで奪ってよ こころ こころはここにあります/街田青々

絶妙なアンバランスって何だろう。分からないようで分かるような気もする。具体を出さずに受け止めたのがいいなと思った。「こころ こころは」の部分も絶妙なアンバランスという言葉に繋がっていると思う。

そ-03 その感じ、そのスピードで吹き込めば風船は永遠になるから/はすおみ

風船の寿命って長いようで案外短いよな、と思った。一週間くらいで浮かばなくなって地面に落ちてしまう感じ。永遠の風船のためには「スピード」が大事ってなんかいいな。空気の量とかじゃなくて。

た-02 ただいまが溶ける温度は留守番をしたぬいぐるみだけが知ってる/南 美桜

「ただいまが溶ける温度」って表現が好き。家族全員出かけてるときの家に帰ったとき、確かにそこには別の空間が広がっているような気がした。人がいることでだんだんもとの家に戻っていくような感じ。

と-06 隣町からやってくる束の間の宇宙旅行のあとの音声/南 美桜

分からないんだけど、なんか、惹かれた。隣町からやってくる=束の間の宇宙旅行ととっても行けるし、もしくは宇宙旅行は全く別のものの比喩で、その音声が隣町の人のSNSに上がってた、という解釈も出来そう。「音声」の持つ言葉の強さよ。

な-01 懐かしい話をはじめた私たちいつから過去になったのだろう/ことり

わかるーーーーーーーーーーーーーーーーーーー去年の出来事に関して懐かしいっていうけど、卒業したらまた違った意味で懐かしいって言うんだろう。案外、過去の定義って曖昧なんだ。全てが現在とも言えるし。

に-01 虹色のパンケーキにはなりたくない噓つきは泥棒の始まり/じゃすみんtea

こういう歌好きなんだよな、つい選んじゃうんだよな。「嘘」っていうワードが出て来るだけで、限られた文字数の中の言葉さえ真偽が曖昧になる。泥棒って言葉けっこう使いこなすの難しいけど(失敗経験あり)、虹色のパンケーキっていう強烈な言葉を使うことによって泥棒っていう言葉が持ちうる負のイメージを打ち消しているような気がする。

に-02 人間の形の静謐 この蘭が飛ばさずにいる花粉を想う/コバヤシモカ

全ての花粉が飛ぶわけではない、という後半部分にまずどきりとした。様々な要因が絡み合って人間としてのわたしがあって、そういう壮大な奇跡が「静謐」という言葉によって受け止められてる感じがする。

ぬ-01 盗みたくなるほど映画泥棒が好きな映画を誰も知らない/夜夜中さりとて

映画泥棒っていう言葉がめっちゃいい……(これ以上は何も言うまい)

これは納得の納得でした。さりとてさんさすがです……

は-05 羽を持つ虫の交尾を見ていると逆上がりだってできる気がする/橘春

羽→逆上がりという結びつきに、交尾という条件が混ざったことによって独特の世界観が出来ている。交尾と言う言葉によって歪んだ世界が、下の句でもう一度強制的に幼く還る、その展開が好き(何言ってるか分かんないな……)

は-06 はみ出した私に多数決という挙手の時間のあまりに長く/野添まゆ子

時間に着目したところがいいな、と思った。最近の多数決って公平性を保つためか伏せてやることが多いんだけど、伏せてるとやることがないからより長く感じます。数える時間が必要だから、多数派の意見の人はずっと手を挙げてる。

ひ-04 人ひとり殺せるほどのまばゆさがなにか教えてあげるね おいで/山口綴り

呼びかける系の歌に弱いです。何をされるか分からないけど、わたしなら言ってしまうような気がします。「殺せるほどの」はまばゆさを引き立てるための比喩であって、これからされることはまばゆい、素敵なことなのではないか派。

ま-02 マクドナルドのポテトの音を口ずさむ上司になんてなる気もないよ/長井めも

音を立てて食べることを「音を口ずさむ」と表現したのでしょうか。雰囲気が好き……。上の句と下の句の間にスペースを自分なら入れてしまう、と思った。でもそうしたら普通の歌になる。繋がってるからこその。

めもさんでしたか。めちゃくちゃ岩倉曰みを感じてました。

ま-03 「まだ今は寒いからね」とあるのかもわからない夏の話をしてる。/A.L.ゾルバ

生きてないかもしれない夏、だと普通だけど、この歌は「あるのかもわからない」って言う。地球規模で心配する。最後の読点もいいアクセントになってる。

ま-05 また、じゃなく、じゃあ、で別れた日のまるで開け損なったピアスホールの/千仗千紘

ピアス、開けようとしたこともないけど、共感できる。奇抜すぎないし共感に走り過ぎてもいない。まとまってる、めっちゃ上手い。

む-01 無印のBGMを聞きながらウールは牧場の夢を見ている/杏藤ミレイ

無印のBGMっていいなぁ。もちろん店の名前だけど、そうでないほうの無印の意味も効いてると思う。

も-01 もうだれも待たなくなったバス停のようにそれでも立ちつくす日々/三浦なつ

全ての修飾を受け止める「日々」、受け止め得る日々、好きだ。わたしもいつか過去に囚われなくなる、進むことに精一杯になって周りが見えなくなるときがくるのかな。いい意味で。

れ-01 レース編む人の手止まる このドラマ真犯人は五歳児だった/こじか

世界観が好きです。そんなことってあるんだろうか。あるいはこの「ドラマ」は、現実世界で起きたことを差していたりするのかな。

以上です!vol.弐も楽しみだなぁ~(既に提出はした)


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