6日目、短歌が私を助けてくれたっていう短歌
最近日記を更新していなかったので近日中に2本ぐらい書き上げられたらいいな。
私の推し短歌はたくさんあるし、これからも増えていくと思いますが、「一番は」と聞かれたらこれを答えざるを得ないという短歌を紹介します。
起動時に詩的な音が聞こえたら故障ですあなたの故障です/中牧正太(2019/4/4『詩』)
この短歌に出会ったのはかなり初期の頃で、好きな短歌を書き集めるノートの1冊目の1ページ目の真ん中あたりに記録されてました。
また中牧さんか!と思うかもですが実はこれが決定的に中牧さんにハマる要因の歌だったような気がします。ちなみにからすまは中牧正太をなかまき「せいた」とずっと発音しています。勿論違うことはわかってるんですが、何故か最初そう読んでしまい、それが定着しました……マジでなんで……
この歌はあなたを機械に例えて「故障している」と突きつけ、否定しているように見えるかもしれないけど、わたしはこの歌を肯定の歌だと解釈している。
詩的な音=故障という方程式は当時の私にとっては衝撃的なものだった。裏を返せばこれは故障が詩的だということだ。
わたしはどちらかというと壊れている側の人間だと思う。だから、この歌に出会った私は、「やっぱり短歌は私に合ってる文学の形なのだ」と確信することができた。
短歌は詩であり、詩は故障しているものを救うのだ。「起動時」の解釈は色々悩んできたけど、「立ち上がるとき」だと思った。壊れている側の人間が前を向いて、立ち上がって、何かをしようとするとき、詩的な音が聞こえるのだ。あるいは、詩が壊れている者を起動するのかもしれない。
堂々と詩が、詩がと語っているけど、わたしが語るのは広義の詩で、狭義の詩、いわゆる自由詩はまったく作れない。いやぁ広すぎてちょっと……短歌ぐらいの大きさが本当にちょうどいいんですよね。
下の句の「故障ですあなたの故障です」について、「故障です」のリフレインは、機械が機械に告げるような冷たさを持ちそうだけれども、この場合はリフレインに加えられた工夫によってそれを上回るぐらいのあたたかい雰囲気が作られている。「あなた」という呼び方は、わたしの心にずしっと響いてきた。あなたはここにいるのだ、というように、存在を確かにしてくれているような気持ちになった。ひらがなに開かれていて、機械とは思えないやさしさに満ちている。
故障ですあな/たの故障です、の句跨りも、下の句全体をゆるく繋げている効果と共に、「あなた」をさらに強調させていて、よりずしっと来る。ここの句跨りに気づいたとき、わたしは叫んだのです。