1日目、短歌を始める前の話
一目惚れという概念は短歌にも存在する。
中三のとき、私とはるさんと数名で、詩歌同好会を立ち上げようとしたことがあります。(中一の頃から短歌は好きでした。当時は本格的にやろうと思うほど自信がなく、たま〜に詠む程度でした。)
結果として、「いや文芸部あるやん」ってことで同好会の設立は頓挫。それ以降、我々は文芸部で短歌をやることになる。今となっては「文芸部でよかった」って思ってますけど。同好会だったら色々面倒だったろうな……。ちなみにはるさんが入部したのはこれがきっかけだったはず。私は中一の頃からずっと文芸部でした。
まぁそれはどうでもよくて、語りたいのはそこじゃない。同好会は無理そうだよって先生から言われたときに、「ついでにこういうコンテストがあるんだけど、どう?」ってその先生が見せてくれた冊子がありまして。
ぴらってその冊子をめくったら、こんな歌があった。
大人しい君が歴女と知ってから好きになってる織田信長も/本間 凪
第31回東洋大学「現代学生百人一首」の秀逸作品です。
戦慄が走りました。
好きになってる織田信長「も」。(思えば助詞「も」の威力を感じたのは、これがはじめだったのかもしれない)この最後のもがあることで、主体の「君」への好意が分かる。織田信長と一緒にさりげなく好きだと言う。「実は好きになっちゃったんだよね、織田信長も」そんなふうに語る主体の姿が目に浮かぶ……恋の照れくささとかが絶妙に現れてて、めっちゃいい。高校生らしさもありつつ技術もしっかり示してて、最強の一首。
これ、別にメモってたわけじゃなくて、ほんとに一瞬ぴらってめくって見でただけなのに忘れられなくて、あとから「現代百人一首」「織田信長も」「歴女」とかってキーワードで検索して探しあててますから。本当に衝撃だった短歌は、一度見たら忘れられないんだなぁって。
しかもこのエピソード、誰にも語ったことがない。マジの恋みたいだ……。
ただこの歌、「私に短歌は無理だ」と思ってしまったきっかけでもありました。短歌は好きだけど、どこか距離があった。そんなことないです。気持ちさえあれば、作歌を続けていけば、誰かの心に届く歌は作れます、作れるようになったと私は思っています。からすまが本格的に短歌を始めたのはこの一年後、高一の春。