短編小説『わたしは花瓶。呪文のように言い聞かせる。』第01話 オルファの黄色いカッターナイフ
ベッドの中で独り、耳をふさいでいる。
静けさに耐えきれず頭から毛布をかぶった。眠れない夜に聞く、静寂の音が嫌いだ。
もう三十分以上もこうしているだろうか。耳から手をはずそうとしたのだけれど、肘の関節が油の足りない機械のように悲鳴をあげて動かない。きしむ腕をゆっくりと伸ばして、ベッドの中からはいだした。
照明は消したままだけど、窓から差し込む月明かりのおかげで部屋を見渡すことができる。半年ほど住んでいるワンルーム。綺麗に片付いたワタシの部屋。憧れていた独り暮らしは自由で