短編小説『わたしは花瓶。呪文のように言い聞かせる。』第03話 罵られるだけでイッてしまうイヤラシイ女
学食でお昼を済まし、午後の講義までの時間をどうやって潰そうかとぼんやり中庭を歩いていると、不意に背後から声をかけられた。
「モエ発見!」
「え? サキさん!?」
唐突に肩を組まれて驚いてしまったのだけれど、相手がサキさんだと知って安堵した。同時に先日の軽音の部室での出来事がよみがえって赤面してしまう。
「さん付けとか堅苦しいな。呼びタメでいいよ」
他人を呼び捨てにしたことなんてないワタシは、そんなことを言われてもためらってしまう。
「ほら。あたしの名前、呼んでごらん?」