
いつの日かこの星から消えても
卵焼きを焼く。
昔からだし巻きは苦手なので
砂糖をたっぷり入れた甘いやつ
でも今日私が作った卵焼きは私しか知らない
私のお腹に入って消えていく
2年同棲した恋人は
私が作った手料理の味をもう忘れているかな
誰かに食べてもらえれば
それがその人の家庭の味になれば
忘れられずにすむと思ったけど
あなたの家庭の味は別の人の手料理になるんだろう
私の生み出したものを知ってくれてる人って
どれくらいいるのかな
その僅かな人の何人がそれを忘れずにいてくれるかな
必死に紡いでいる今日も
自分ですら忘れていく
自分にできないことを人に求める
でも自分じゃないからこそ希望を持ってしまう
だって私は
大好きな人との思い出を忘れないように
噛み締めて、その度に涙を流して
薄れていく記憶に絶望を抱いている
私が思いだして泣いていることを
亡くなったじいちゃんはどう思うだろうか
でも忘れられたくないから
覚えてて欲しいから
相変わらず思い出して泣く
誰かは、私を忘れたくないと泣いてくれるのだろうか