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レッスンで使う言葉

訓練生時代、日本からアレクサンダー・テクニックの先生方が来られたことがあり
光栄にも通訳という大役を任された。
当時、先生からは「言葉を足さずに、そのまま直訳してほしい」
って言われたけれど、それはそれでなんかしっくりこない言葉もあって
直訳するにしてもどの日本語が一番ぴったり合うか、ずいぶんと考えさせられた。
今でも日本語でレッスンする時は、言葉選びに気をつけている。

特にディレクションを伝える時、
すっと理解しやすい、思い浮かべやすい日本語もあるのだが、
英語の方がニュアンスが伝わりやすい言葉もかなりあったりする。

例えば、”UP”。
訳すと”上”とか”上へ”と、レッスンでは使われていると思うけれど
これだと向きだけ示している感じがして。
UPには動的意味合いも含まれているので、”上”とか”上へ”だけじゃ
ちょっとパンチにかけるなあと思い
”UP”は”UP”のまま使うようにしている。

頭のディレクションで使う”Forward&Up”も、”前へ上へ”と訳すけれど、
”Forward&Up”自体、ひとつの塊として捉えるべきで
”前へ上へ”と言ってしまうと、なんかバラバラ感があってしっくりこないので
”前へ上へ”という日本語を最終的に使うにしても、
英語でのディレクションを伝えるとともに
私が伝えたい意味を絵に描いて説明するようにしている。

”Above”も”〜の上に”、”〜よりも上”と訳すけれど
例えば、”股関節よりも上に”と言うより
”Above the hip joint”の方が
乗っかからない感がもう少し動的に思えてしっくりくる。

アレクサンダー・テクニックは、
ポジショニングのテクニックではなく
いつなん時でも、秒単位で流れ続ける全身の関係性を扱うものなので
どうしても動的な言葉を使いたいんだな、きっと私。

レッスンで体験した感覚はその瞬間のもので
感覚も癖で構築されたものの一つなので
感覚に頼ってレッスンで受けた内容を自分で再現しようとしては
決してダメ。
そこで、生徒さんがレッスンの時以外でもディレクションを考え続けるためには
言葉ってとっても大事になってくる。

そして、言葉にも手の技術にも自分の考えが表れるので
教える側の頭がすっきりクリアじゃないと
ディレクションもフワッとして、生徒さんには伝わりにくい。
逆に言えば、言葉も手の技術も、相互作用で成長していくもの。

レッスンで使う言葉は、
指導者自身にとっても生徒さんにとってもほんと大事。


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