見出し画像

サム・アルトマン解任関連の情報まとめ

ただいまフロリダにいて、時差の関係で日本メディアの動きが鈍いのでまとめておきます

  • サム・アルトマンCEOは解任、グレッグ・ブロックマン取締役会議長兼社長は辞任(従業員としての地位は残すと通告された)

  • 他に3人の上級研究職が抗議の辞任

  • ジェイソン・クォンCSOはアルトマン氏の復帰について「楽観的」だと社内に伝えたが、復帰しないことにした

  • アルトマン氏の解任を決めた取締役はイリヤ・サツケヴァー共同創業者兼主席科学者、アダム・ディアンジェロ(Quora創業者)、ターシャ・マッコーリー(ロボテク起業家)、ヘレン・トナー(ジョージタウン大学のセキュリティ・新興テクノロジーセンター長)の4人

  • アルトマン氏との対立が噂されているのはイリヤ・サツケヴァー氏だったが、ヘレン・トナーが21世紀のジョン・スカリーではないか、とされる

  • 解任の理由は「取締役会に対して率直でなかったこと」だが、何を率直に伝えていなかったかは明らかでない

  • マイクロソフトは今後数年間で利用できる100億ドル(約1兆5000億円)ぶんのAzureのコンピューター資源利用権を与えたとされるが、実際には一部しか提供されておらず、アルトマンCEOとマイクロソフトとの交渉内容が正確に取締役会に報告されていないのでは、との観測がある

  • 未上場のOpenAIの財務状況は不明だが、ChatGPTの大成功にも関わらず研究開発費はかさんでおり、営業赤字であるとみられている

  • ブラッド・ライトキャップCOOは「率直でなかったこと」とは財務上の不正の意味ではないと明言

  • 「率直でなかったこと」は、ジョニー・アイブ、孫正義と検討中と伝えられる「AIを搭載したスマホ以外のもの」ではないか、との観測もある

  • 解任の直前まで、人工知能の安全性についての議論で路線対立があった

  • シリコンバレーでは、AGIがソフトウェアサービスとして提供されれば、映画マトリクスやターミネーター的な世界になるのは必然とされ「人工知能の安全性」とは、ハッキングや情報漏えいのことではなく、人類滅亡の危険を回避することの意味

  • アルトマンCEOが目標として掲げたAGI(汎用人工知能)を「空の上の魔法のような知性(magic intelligence in the sky)」と呼んだことから「あいつは神を創造しようとしている」との批判がある

    • 補足 AIの発展に対して「人間は人間にしかできない創造的なことをするようになる」という楽観論は画像・動画生成の精度がほぼ完成に近づいたことで誰もいわなくなりました。現在、「判断すること、責任をとることは人間にしかできない」という楽観論がありますが、全知全能のAIが判断できないわけがなく、あらゆる人間の専門家の知性を結集してもかなわない存在の判断に責任は発生しない(替えが効かないから)以上、残された人間性の領域は肉体労働だけ、という予測が現実味を帯びてきています。人間性の要素が、知性、身体、人格、家柄の4つだとすると、ロボット工学がなかなか進展しない状況が人類の防衛線になっていますが、ここが突破されると、性格のよさ、家柄のよさしか残りません。つまり、AI・ロボットを保守する役割を与えられる超天才(全世界で恐らく数十万人)と、超天才をサポートする性格のよい下僕(超天才ひとりに数十人程度、ベーシックインカム対象者)、AI・ロボットを所有する家柄の高い人以外は、人類社会に居場所がなくなります。これが「AIの安全性」という場合の本当の議論の中味です。これをひとことで「Buy Now, Dystopia Later」と言います。

  • GPT5はAGIの初期バージョンと考えられる

  • OpenAIに投資しているセコイア・キャピタルとタイガー・グローバルは、アルトマン氏復帰に向けてマイクロソフトを説得中

  • 土曜日の夜、アルトマン氏の自宅(サンフランシスコにある2700万ドルの邸宅)にOpenAI幹部のほか、投資家ら数十人が集まって今後の対応を協議した

  • アルトマン氏の新しい人工知能ベンチャー設立の計画にOpenAIへの出資者も資金提供を申し出ており、復帰か新会社かを早期に選ぶ必要がある

  • アルトマン氏の新しい人工知能ベンチャーには、辞任したグレッグ・ブロックマン氏も参画の意向

  • 金曜日朝の時点で、アルトマンCEOは人工知能の運用コストを劇的に低減させるAI専用チップの構想を語っていた

  • アルトマン氏は、専用チップの開発からソフトウェアサービスまでを垂直統合的に提供するフルスタック型のベンチャー企業の構想を語っており、これがOpenAIの将来像から、自身の人工知能ベンチャーの構想に切り替わる可能性もある

  • マイクロソフトはアルトマン氏復帰を前向きに検討しているとされ、アルトマン氏復帰の場合、取締役または議決権のないオブザーバー1名を送り込む見込み

  • OpenAIの優秀な研究者の流出が続いており、アルトマン氏の解任はさらに同社を見限る従業員を増やすとみられている

  • 土日にも関わらず、ライバル社は求人のため、OpenAIの従業員に積極的に連絡を取っている

  • アルトマン氏復帰の場合、解任に賛成した取締役4人は交代の見込み

  • OpenAIは、Google、Amazonという営利企業が人工知能技術を独占することへの懸念から、オープンなAI開発(AGIのもたらす破滅的シナリオが営利の追求で合理化されないこと)を目的に設立されたNPOとしてのOpenAIと、営利企業として外部からの資金提供を受けるために設立されたOpenAIのふたつがある

  • AI開発は極めて巨額の資金が必要で、研究資金捻出のために営利事業を展開することに不自然さはない

  • 非営利企業として設立されたOpenAIの初期の出資者はピーター・ティール、リード・ホフマン、ジェシカ・リビングストンで、金の亡者たちが設立した非営利企業が非営利のわけないだろ、との指摘

  • 営利企業としてのOpenAIの取締役会は、株主ではない外部の役員で構成され、営利企業としての利益追求が人類を滅亡させないことを保証する体制になっていた

  • 860億ドル(約12兆8700億円)相当の従業員株の売却は、計画を進めていたアルトマン氏の解任で頓挫する可能性がある

  • スティーブ・ジョブズの復帰は12年、アルトマンの復帰は数日の可能性に、テクノロジー業界では「何もかもが早くなった」とのフライングな見とおしを語る者もいる

  • 仮にアルトマン氏が復帰しても、取締役会=悪、アルトマン氏=善の対立構造で理解するのは間違い。解任理由が表に出てこないということは、恐らく、AGIの原形は完成していて、このままGPT4までの安全対策で公開してもいいのか、人類滅亡スイッチを押すことになるぞ、という切迫した事情があったと考えないと、路線対立のことも、なぜこの時期だったのかも理解できない。人類が直立歩行を始めた瞬間に立ち会ったくらいのインパクトが背後にはあるはず。