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愚かな国民の愚かな政府について

福澤諭吉の『学問のすすめ』の中で僕がいちばんグッとくる大好きなフレーズは、
<西洋の諺に「愚民の上に苛き政府あり」とはこのことなり。こは政府の苛きにあらず、愚民のみずから招く災いなり。愚民の上に苛き政府あれば、良民の上には良き政府あるの理なり。ゆえに今わが日本国においてもこの人民ありてこの政治あるなり。>という個所である。

僕なりに要約するならば、「政府が愚かなのだとすれば、それは愚かな国民自身が招いた災いである」という意味である。

今の日本にぴったりの言葉ではないだろうか。

少子化というのは、国全体として30年以上もちっとも豊かにならず、停滞したままであることが根本的な原因である。パイが大きくならなければ、人口が増えれば、1人あたりの分け前が減る。そういう状況で、わざわざ子どもをつくろうという気持ちにならない。

さらに追加するならば、大きくならないパイの分配に関しても不公平というか、大きな格差があることも無視できない。ざっくり言えば、高齢者の方が若い人より恵まれており、正規雇用者よりも非正規雇用者の方がいろいろな点で身分保障され、男性よりも女性の方がまだまだ弱い立場にある。したがって、非正規雇用の仕事にしか就けない若い女性などは最悪ということになる。そのような社会で、子どもを産みたいと思うだろうか。

したがって、本気で少子化対策をやりたいのであれば、若い人たち(具体的に言えば、これから子どもを持つようになる世代)に、日本人として生まれたことに「お得感」を感じてもらえるような国にすることに等しいと思う。

そのためには、パイを大きくすることも重要だが、所得再分配のルールを修正して、現在、既得権益を持っている人たち(高齢者、正規雇用者、男性)と、「じゃない人たち」(若者、非正規雇用者、女性)の格差を是正することが必要である。ついでに言えば、政策というものは、チマチマやっても利益実感を感じてもらえないので、ちょっとやり過ぎくらいに取り組んだ方が良い。

日経新聞の記事には、「自国民にも選ばれぬ日本」という表題が書かれているが、現状においては、まさにそのとおりであり、投票率が上がらぬのと同様、出生率が上がらぬのも、若者たちからすっかり失望されて、匙を投げられているという意味だと為政者は謙虚に受けとめるべきであろう。

若者に支持されない国は悲惨である。世界中、どこに行ってもメシが食えるような優秀な人材であれば、国を見捨てて、さっさと他のどこか、少なくとも日本よりも住み心地が良いところに移住するだろう。残るのは、老人と、それ以外は日本に居残るしか選択肢がない人間である。そうしたメンツではパイが拡大しそうなシナリオはますます描きにくいだろうし、日本という国自体が着実に地盤沈下していく未来しか展望できず、少子化にも歯止めがかかることはない。

地方の過疎の村とか、駅前にシャッター商店街があるような地方の中小都市で見られるような状態が、たぶん何十年後かの日本全体の姿であろうことは容易に想像がつく。

そんな日本に誰がしたのだということであるが、冒頭に書いたとおり、他ならぬ日本国民の責任なのである。

じゃあ、どうするんだと言われても、僕にもわからない。黒船とかGHQとか、外圧の力がなければ変革できなかった国である。どこかの国からの侵略がいよいよ現実のものとなったりすれば、あるいは南海トラフ地震とか首都直下型地震のような大規模自然災害でも起きて国民の2,3割くらいが死ぬくらいの事態となれば、発狂して一億躁状態になって、強力なリーダーでも出現して何かが変わり始める可能性はあるが、今しばらくは無理だろう。


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