大企業のバーゲンセールについて
コンビニ大手「セブンイレブン」の親会社である「セブン&アイHD」が、カナダの同業者から買収提案を受けているのだという。
日本の「セブンイレブン」は、周知のとおり、元々はアメリカの同名のコンビニ・チェーンのFCとして日本上陸したが、日本独自のノウハウを進化させて、最終的には本国の元親会社を買収してしまった経緯がある。
そうした「セブンイレブン」が、カナダの会社から買収提案されるというのは、時代の変遷を感じざるを得ないし、日本企業の国際的な「立ち位置」の凋落ぶりを象徴しているという気がする。
背景には、「失われた30年」と言われるように、日本経済、日本企業の長年にわたる低成長(というか、時間が止まってしまっているような状態)がある。日本経済、日本企業が足踏みしている間に、諸外国や海外企業は、どんどんと成長しているのだ。
あとは、最近の円安の影響が大きい。「安い日本」と言われて、外国人観光客が押し寄せているが、日本企業も諸外国から見れば、明らかに安いし、お手頃価格ということになる。
日本のコンビニで最大手で最強とされる「セブンイレブン」でさえ、親会社の時価総額が5兆円ほどに過ぎない。一方、今回の買収提案をしているカナダの「アリマンタシォン・クシュタール」の時価総額は8兆円超である。かつては、時価総額ランキングで世界のトップを日本企業が独占していた時代もあるが、今では、トヨタ自動車だってベスト30位台をウロウロしている状況である。海外の大手企業から見れば、日本の優良企業といえども、衝動買いだってできてしまいそうなお手頃価格である。バーゲンセールをやっているようなものである。
こうした状況について、どのように評価すべきかという話であるが、資本主義社会である以上、おカネを持っている人間が、買いたいものを買うのは止められない。そもそも、国際的に活躍する企業というものは、国籍など、あってないようなものである。むしろ、政府による制約からできるだけ逃れようとする。それは仕方がない。
ただし、そうなると、気がついたら、日本の優良企業の多くが、いつの間にやらどこか他国の株主に支配される企業になってしまっているかもしれない。サッカーの英プレミアリーグみたいなものである。今も日本企業の株式の3割以上を外国人機関投資家が保有しているということなので、今後ももっとこうした状況が進み、やがて主たる企業はだいたい外国人の「持ち物」になっている可能性はある。
そうなると、配当金等の形で稼いだおカネの大部分が日本から海外に流出していくだろうし、本社とか重要拠点も日本以外の国に移転するかもしれない。そうなったら、税収も雇用も失われてしまい、日本には何も残らないというような現象も起こり得るかもしれない。日本全土が、地方都市の「シャッター商店街」みたいになってしまうということを意味する。
じゃあ、どうするのかとなると、あまり即効性のある妙案はない。日本国内でも、大都市に人口が集中して、地方が空洞化している状況を改善するのが難しいのと同じである。人が地方を捨てて、都市部に向かうのは、地方にいても仕事がないし、面白くもないからである。地方でも人口が着実に増加している都市はある。たとえば福岡市である。そうしたエリアは、東京や大阪に負けないコンテンツが充実している。同じ兵庫県でも神戸市の人口は減っているが、明石市とか尼崎市は若年者の人口が増えている。子育てを支援する施策等が充実しているからである。
つまり、人が集まり、経済が活性化するためには、それぞれの地域の自助努力が求められるのと同様、国も他国との競争に負けないように頑張らないと、国全体が沈没してしまうのは必至である。個々の都市間での競争と同じように、国同士も競い合って、より魅力的な場所にならなければならない。
ややこしい規制で参入障壁をこしらえるのは、それとは逆の動きである。そんなことばかりしていては、誰からも相手にされなくなってしまう。そもそも日本は言葉の壁があるのだ。英語を準公用語にして、英語でビジネスが展開できるようにする、英語が通じる労働者を揃えるというのは、もはや最低必須ラインであろう。
円安だから為替介入するとかいうのは、まったくの対処療法であり、意味がない。中長期的な国家戦略が問われているのだ。