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「ゾンビ企業」について

「ゾンビ企業」とは、「国際決済銀行」(BIS)の定義によれば、「3年以上にわたってインタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)が1未満、かつ設立10年以上」の企業のことであるのだそうだ。ちゃんと定義があるとは驚きである。

「インタレスト・カバレッジ・レシオ」(ICR:Interest Coverage Ratio)というのは、財務分析上の指標であり、「事業利益」(=営業利益+受取利息・受取配当金)を金融費用(支払利息・割引料)で除した数字である。1未満ということは、「事業利益」で利払いができない状態を意味する。本業が儲かっていないのか、過剰債務を抱えているかどちらかであろう。

「設立10年以上」というのは、「長いこと商売やっていても、この体たらくならば、もう商売なんか辞めたらどうでしょう」という意味であろう。

コロナ禍に対応した実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」で命を繋いできた「ゾンビ企業」が、21年度時点で約188千社と新型コロナウイルス禍前の19年度と比べると約3割増えているという。

日銀が大規模緩和を修正したことで、今後、企業の利払い負担は増えることになる。23年にはゼロゼロ融資の元金返済が本格化、当初実質免除されていた利払いも開始する。円安・物価高の影響もある。そろそろ「ゾンビ企業」としては、今後の身の振り方を考えないといけない時期が来ている。

しかしながら、「インタレスト・カバレッジ・レシオ」の数値が悪いというだけの理由で、箸にも棒にもかからぬ企業であると断定するのは性急すぎるかもしれない。過去にいろいろと事情があって自己体力に不相応な負債を抱えてしまっていること自体は間違いないものの、法的整理や私的整理等により、債務の一部免除や、DES(デット・エクイティ・スワップ)等のやり方で債務負担を軽減できれば、再生可能な企業もある。背負っている荷物を一時的に軽くするということである。

ただし、そういうやり方で再生可能であるためには、「事業利益」あるいは「営業利益」がしっかりと稼げる企業であることが絶対的に必須条件となる。本業のビジネスで安定的に利益を出せないようでは、いくら荷物を軽くしたところで経営を立て直すことはできないし、そもそも、本業で利益が出ないということは、企業としての存在価値がない、あるいは社会的使命は既に終わっているということである。

そういう企業は、気の毒であるが、さっさと処理してしまった方が良い。

人間が病気や怪我になった場合でも、助けられる患者、助けられない患者がある。助けられない患者をダラダラと延命させることは患者本人のためにもならないし、社会的にも筋が通らない。

人間も企業も同じである。

社会的使命を終えた企業はさっさと最終処理をして、売るべきものは売り、残ったものは株主や債権者に配当するのが正しいと考えるべきである。また、社員はもっとちゃんとした企業で再起を図るべきである。成長が見込めない業界から成長が期待できる業界に労働力を移転させなければ、日本経済自体の成長も期待できないからである。

日本の経済が停滞している理由の1つは、そういう見きわめが遅々として進まず、産業界の新陳代謝が円滑に進まないことにある。成熟期を経て衰退期に入った企業が順番に死んでいくことは決して悪いことではない。人間だって、新しく生まれる命もあれば、死んでいく命もあるのと同様である。いつまでも死なない方がむしろ不自然なくらいである。



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