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プラスティック 井上 夢人 前半ネタバレ無し後半ネタバレ解説
ネタバレ解説は後半です。
2024年本屋大賞発掘部門受賞作。
あらすじには、
54個の文書ファイルが収められた1枚のフロッピーディスク。一番はじめに記録されていたのは、主婦・向井洵子が書いた日記だった。日記の内容は、出張した夫の帰宅を待つ間に洵子が遭遇した奇妙な出来事であり…
とあり。つながりのなさそうな文書が一つの世界を紡ぎだす…という展開が好きなのと、
この本を手に取ったあなたの直感を信じて迷わずレジに持って行ってほしい。
というキャッチコピーにつられて素直にレジに持っていきました!(笑)
本屋ならではの出会い。
舞台は30年以上前で、スマホもなく、フロッピーディスクに文書ファイルを保存していた時代。そういう時代だからこそ生まれたしかけだし、
映像のない小説だからこそ楽しめるストーリー。
途中までの、きっとこうなんだろうな、という予測はあたってたけど、
真相はその予測を超えていて、ちゃんとびっくりできました!(笑)
ここからネタバレです。
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冒頭で、夫の出張の帰りを待つ主婦向井洵子が、
自分は全く覚えがないのに、自分の名前で図書館に利用登録されていたり…
というくだりは、どれかのパターンだとすぐに予想がつきました。
・向井洵子が多重人格
・別人が向井洵子になりすまして行動している
・向井洵子の方が、自分は向井洵子だと思い込んでいる別人で、本物は別にいる
向井洵子の向かいの部屋にいる初美と、初美と同居して女性が、たぶん同一人物で二重人格なんだろうな、というのも予想はつきました。
でもその同居女性が、男をひっかけて金銭を奪うときに、男をボコる男性キャラまで同一人物だったというのは驚き。
うまく、別人と思い込むようなミスリードがされています。
更に別の男性が、フロッピーディスクが自分の部屋の玄関に入っていたのがきっかけで、いろいろ初美たちの事を調べていき、その経過をフロッピーに残すことによって、彼女たちの過去が明らかになっていくのだけれど…
結局、その男性も、同一人物の別人格でした!
自分で自分を調べていたのだという…
映像では絶対できない展開。
そしてそして向井洵子も初美と同一人物でした!!!
なのに部屋が二つあるのは、初美が暮らしていた部屋の、向かいの部屋に住んでいる本物の向井洵子とその夫を初美が殺しちゃったから。
初美は自分を向井洵子と思いこみ、向井洵子の部屋に住んでいた時にワープロで向井洵子として日記を書いていたので、「向かいの部屋の初美」という描写になっていたのでした。
いろいろあったのちに、病院に入れられ、多重人格だと指摘され人を殺してしまったという事を自覚したとき、それを信じない人格もいれば生きる事をやめようとする人格もいます。
「登場人物ほぼ全員同一人物」これが一番のびっくりポイントだし、ちょっとわかりにくい点かもしれません。でも読み返すと、ちゃんとつじつまはあいます。二人いたように見えるシーンも、よく読むと一人でも成立してます。
最終的には複数の人格たちは事情を理解し、本来の肉体の持ち主の人格に統合されるよう、事情説明を加えてフロッピーをたくします。そこが、単なる謎解きでは終わらない、救われる結末です。
この小説自体が、そのフロッピーディスクの内容、という作りだったのです。