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同じ内容を反復学習するなら、〇〇〇〇を変えたほうが効果的!?

家庭で勉強するといえば、
いつも決まった部屋で机に向かい、
集中しやすい静かな環境で取り組む場面を
イメージすると思います。

しかし、この勉強の取り組み方は本当に正しいのでしょうか?

1970年代、次のような実験がミシガン大学で行われました。

(要約)
4文字からなる40個の単語を見せ、
それらを覚えるために10分の学習時間を2回与えた。
その際、

2回とも同じ部屋で勉強するAグループ
1回目と2回目の勉強する部屋を変えるBグループ

に分けてそれぞれ学習を行った。
3時間後、
覚えた単語をできるだけたくさん思い出して書くというテストを
A、Bどちらのグループも入ったことのない中立の部屋で実施した。

結果、勉強する場所を変えたBグループのほうが
同じ場所で勉強したAグループよりも思い出せる単語数が
40%以上増えていた

ベネディク・トキャリー,2015,『脳が認める勉強法』,ダイヤモンド

同じ内容を反復練習するなら…

つまり、

同じ学習内容を反復して勉強するのであれば、
勉強場所を変えたほうが効果的

であるということです。

私たちはなんとなく、
決まりきった場所で学習するという考え方が定着しており、
場所が変わると
落ち着かないため学習に悪影響を与えてしまうと思いがちですが、
同じ内容を勉強するのであれば、
環境に変化をつけて勉強したほうが効果的である
と考えるべきなんです。

単語や漢字、計算などの習得を目指して繰り返し学習するとき、

1回目と2回目の勉強場所を変えるだけで記憶量が増える

というエビデンスを知っているだけでも、かなりの差が生まれます。

しかも「約40%増加=約1.4倍」の効果があると考えれば、
部屋を変えるだけで反復練習の回数を減らすことも期待でき、
学習の負担も軽減されます。
また、移動して環境を変えることで気分転換がなされ、
脳も身体もリフレッシュできるかもしれません。

このエビデンスの根拠についてはわかっていませんが、
次のような推測がなされています。

ある単語を覚えるとき私たちの脳は無意識に
勉強場所の環境に関する情報
(目から入る景色や耳から入る音声、肌で感じる風や気温、においなど)を
付随させています。

例えば、forkという単語を覚えるときに、
勉強した部屋の壁の色、本棚、窓から見える花などが
無意識に結びつくので、
勉強場所を変えた場合、
2つの部屋の環境が違いますから、
forkという単語に
2種類の環境情報が結びつくことになります。


同じ場所で勉強している場合とくらべて
forkという単語に2倍の情報が付随されることになりますから、
思い出すきっかけの情報が多くなるため、
テストに答えられる可能性が高まるということです。
(テストを実施している部屋の壁を見て、
 ふと「forkを覚えた部屋の壁の色は〇〇だったなぁ」
 と考えたとき、
 ○○に入る情報が2部屋分あった方が思い出しやすいという感じです。)

そして、このエビデンスのいいところは、
学習者の負担が少ないという点です。
勉強している本人が意識しているのは単語に対してだけで、
環境の情報は脳が勝手に処理していますから、
同じ場所で勉強しようが、
違う場所で勉強しようが
意識下における仕事量は同じなんです。
労力が同じであるならば、
勉強場所を変えるという程度の労力を厭うべきではないでしょう。

私の実践:計算の反復練習を…

2019年、私が中学校の教員として数学を教えていた頃に
このエビデンスを知り実際、試してみました。

中学1年生の文字式において、
やり方を忘れて同じような計算ミスを繰り返ししてしまう生徒に対し、
いつもの教室ではなく学校中を散策しながら
理科室、図書室、音楽室、コンピュータ室など
いろいろな場所に移動し、
その都度ミスが多かった計算問題を黒板に書いて繰り返し学習させました。

すると翌日から計算ミスの割合がグッと減り、
ミスをしたとしても自分で気づいて訂正できるまで
改善することができました。

このように反復練習においては
学習環境を変えるだけで
かなりの効果が期待できることを実感できました。
しかし、私が当時勤めていた学校は少人数の小規模校であったため、
フラッと気軽に実施できる状況であったことは否めません。
通常、学校ですぐに導入することは難しいと思われます。

導入する場合は学校全体で
クラスごとの使用教室が重ならないよう調整が必要になってきます。
さらに教科の特性と専門教室の関係から、
例えば
実験が必要な理科の時間に理科室が使えないという状況にならないように
配慮するなど、日々、すべての授業内容を把握しながら調整しなければならないので、かなり厳しいものがあります。

現実的な活用としては、
このエビデンスを生徒とたちに情報として提供し、
家庭学習に取り入れるようにすすめることが限界なのかもしれません。
ただ、有用な情報を伝えたとしても、
生徒が実施しなければ意味がないので悩ましいところです。

まとめ

学校において活用することには課題がありますが、
「同じ内容を反復学習するのであれば、
 勉強場所を変えるだけで思い出せる量が増える」

というエビデンスは、
かなりお手軽なので、ぜひとも広まってほしいと願います。

参考:脳が認める勉強法 ベネディクト・キャリー著


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