年齢によって勉強法を変えるべき!?
24年間、中学校で数学を教えてきました。ここ数年は学力向上に効果的なエビデンスを授業に活用できないかと試行錯誤を繰り返す日々でした。今回はその過程で知ったエビデンスの1つを紹介します。
年齢によって勉強法をかえるべきか。
結論からいうと、年齢によって勉強法は変えるべきです。
記憶の種類
脳科学者、池谷裕二氏の著書によると、
とあります。この事実を知ったとき、私は憤慨しました。
「もっと早く教えてよ!」と…
私の受験勉強
私は高校生のある時期、大学受験に向けてそろそろ勉強しようと考え、「まずは英単語からや!」と一念発起しました。その日から、1日に覚える単語数を決め、何度も何度も繰り返し紙に書いていました。中学生のときも英単語を丸暗記するのが得意なほうだったので、高校生になっても同じ方法でやれば大丈夫とモチベーション高く取り組んでいたことを昨日のように記憶しています。しかし、英単語の記憶はありません。反復練習した翌日、きれいさっぱり忘れて思い出せない単語がたくさんありました。
「あ、自分は記憶力が低いんだ…能力がないんだ」と嘆き、モチベーションが急降下したのはいうまでもありません。
しかし、事実は違っていたということです。脳が丸暗記を不得意にしている年齢とは知らず、丸暗記をしようとしていたのですから、脳にとって効率が悪く当然の結果だったということです。
もう1度いいます。「もっと早く教えてよ!」と…
知るって大事なことだと改めて実感しました。
教育に生かすには
閑話休題。私の体験談はさておき、この年齢による記憶の種類を理解しておけば、教育に生かせるのではと考えました。確かに丸暗記は高校生くらいの年齢になると通用しなくなるのかもしれません。しかし、逆に小学生や中学生あたりは丸暗記全盛期なので、せっかく脳が覚えやすい状態であるのであれば、理屈は後で考えるとして、とりあえず
ガンガン知識をつめこんでいくという方針で勉強していくのはどうでしょうか?
ただし、つめこむだけではその知識は、教室の机の中に忘れ去られたカチカチのパンのように使いようがなく、いずれ忘れてしまいます。だから、つめこむと同時にその知識をバンバン、アウトプットする機会を設けて「活用できる知識」に変換し、かつ、「状況に応じて適切に選択できる力」を身につけるような勉強法を目指せばいいのではないでしょうか。そして、その「知識を活用する方法(スキル)」も「状況に応じて適切に選択する方法(スキル)」も知識として丸暗記すれば、年齢に応じた記憶力を有効利用できると思います。
試してみたい方法
例えば、九九を丸暗記したあと
9×9=81、9×8=72…と逆から暗唱する
計算練習にはたし算、ひき算も混ぜる ※もっと別の問題も混ぜてもいい
5+5+5=5×□ 5+□+□=5×3などたし算とリンクさせる
7×□=21など逆算的な問題をする ※計算練習に混ぜてもいい
8 12 16 20 24・・・、2 6 10 14・・・など規則的に並んでいる数の規則性を説明したり、次の数を考えたりする(九九以外も混ぜる)
規則性の問題を自分でつくってみる
8×7=56が答えになるような文章問題を考える (イラストを添えて描くのもいい)
などのように、九九を活用するいろいろな場面を準備したり、子どもたちが考えたりすれば、九九がただの丸暗記した知識ではなくなると思います。
ちなみに、私は教員時代、実際に生徒への演習問題を工夫して取り組んできましたが、それはまた別の機会に紹介できればと思います。
つめこみ主義
このように提案すると「つめこみ主義はダメだ」という論調もあるでしょう。しかし、私は「つめこみ主義が悪いのではなく、つめこまれてなさすぎがダメなのではないか」と考えています。この問題の本質はたくさんある知識を習得できていない状態なのかどうかにあると思います。つまり、つめこむことをを批判するのではなく、つめこまれていない状態を批判するべきであって、そのつめこみ方(勉強法や教育法など)を研究、検討するほうがより建設的なのではないでしょうか。
テレビのクイズ番組に出ている東大生の柔軟な思考に驚かされますが、それと同時に、その思考に裏付けされている膨大な知識量を感じとることができます。東大生のような極端な例は稀かもしれませんが、せっかく小中学生の年齢のときに丸暗記全盛期なら、その性質を生かさない手はないでしょう。