寿司屋からワサビが消える日
日本食に欠かせない食材の一つにワサビがある。日本食ブームで海外でも人気となった寿司にもワサビは欠かすことができない存在である。ワサビを香辛料として使い始めたのは平安時代かそれよりも前のことで、かなり古い時代から日本食文化の中に存在してきた。しかし、長いワサビの歴史も、今となっては終焉が迫っている。
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ワサビは、日本各地に分布し、澄んだ水が豊富に存在する過湿地に生えている。夏の暑さに弱いため、夏でも冷涼な静岡県、長野県、島根県などで栽培されている。しかし、近年の温暖化によってこれらの地域でも夏の気温が上昇している。その結果、病気にかかるワサビも増えているという。日本のワサビは今、絶滅の危機にさらされているのである。
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実を言うと、家庭に広く普及しているチューブに入った「練りワサビ」は、ワサビとは別属に分類されているセイヨウワサビが使われている。しかし、ワサビ本来の香りは唯一無二のものであり、日本食に欠かせないことに違いはない。一つの種の絶滅が、時として一つの文化の存在をも危ぶますことがある。