宇宙船地球号の墜落
「リベット仮説」というものがある。これは、生物多様性を飛行機のリベットに例えたものであり、リベット――すなわち種――が欠けると、やがて飛行機――すなわち生態系――が空中分解して墜落することに基づいている。一つ一つの種は、巨大な生態系の中では小さなリベットの一つで、その欠損は大きな影響を与えないこともある。しかし、複数のリベットの欠落がやがて大きな事故を招くように、多くの種の絶滅が生態系のバランスをひっくり返してしまうこともある。
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私たちにとっての問題は、その種が一体どの部分の「リベット」なのかを正確に知ることが難しいということである。皮肉にも、その種がいなくなって初めて、その生物が生態系内でどのような役割を演じていたのかが明確になることが多い。それだけ私たちの生物に関する知識は不足しているのだ。
ここで一つ想像してみてほしい。もし、目隠しをしてジェンガをやれと言われたら、どう思うだろうか。当然、出来るはずがないと思うだろう。しかし、今の人類は目隠しをしてジェンガをしている。ジェンガが一つ一つが生物種、積み上げられたタワーが生態系である。その生物を知ることなく絶滅に追い込むことは、目隠しをしてタワーからジェンガを一つ抜き取ることに等しい。もしかしたら、その段には残り二つのジェンガしかなく、それを取ってしまえばタワーが不安定になってしまうにも関わらず、私たちはそんなことを知る由もなく抜き取っている。
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「宇宙船地球号」のリベットは一体何本はずれたことだろうか。もうすでに限界を迎えている区画もあるかもしれない。さらには、「空中分解」が目前に迫っているかもしれない。私たちは生物たちを知らずに絶滅へと追い込むべきでない。そして、彼らについて知ったとき、ますます保全の必要性を認識することになるだろう。